この記事の要点
- 令和8年度の業務改善助成金は令和8年9月1日に受付が始まりました(厚生労働省「業務改善助成金」)。
- 申請期間は令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日までです。
- 岩手県の令和8年度地域別最低賃金は1,090円で、発効は2026年12月1日の予定です。前日は11月30日なので、岩手の申請期限は11月30日になります。
- 設備投資等は交付決定を受けた後に実施したものが対象です。先に買ってから申請することはできません。
- 令和8年度申請分の事業完了期限は、交付決定の属する年度の1月31日です。納品・支払完了・賃金引上げのすべてをこの日までに終える必要があります。
- 助成上限額と助成率は、引上げ額・引き上げる労働者数・引上げ前の事業場内最低賃金で変わります。要件審査があり、対象となる場合があります(支給を保証するものではありません)。
対象読者は、岩手県内で従業員を雇っていて、最低賃金の引上げに合わせて設備やソフトウェアを入れたい事業者の方です。読み終えると、11月30日までに何を終える必要があるかが逆算で分かります。
岩手の申請期限は2026年11月30日
厚生労働省は令和8年9月24日に、申請期間の再周知を出しています。申請期間は令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日まで、という決まり方です(厚生労働省「業務改善助成金」お知らせ)。

期限は2つの日付の早いほうで決まる
都道府県によっては9月末が申請期限になる、と厚生労働省も注意を出しています。発効日が早い県は期限も早まる仕組みです。岩手県の令和8年度地域別最低賃金は1,031円から59円引き上げて1,090円、発効は2026年12月1日の予定とされています(厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額答申状況」)。発効日の前日は11月30日で、11月30日そのものと同じ日になるため、岩手の申請期限は11月30日です。
発効日は告示前なので最後にもう一度確認する
発効日は答申の段階の予定で、官報告示までは確定ではありません。社内の期限表に書き込むときは「11月30日(発効日確定まで暫定)」としておき、岩手労働局の発表で最終確認します。数日の前倒しがあっても困らないように、実務上は11月中旬までに書類を出し切る前提で組みます。
9月末が期限の県と混同しない
他県の事業場をあわせて持っている場合、期限は事業場ごとの都道府県で決まります。本社が岩手でも、県外の事業場で申請するなら、その県の発効日で判断します。複数事業場をまとめて1つの期限で管理すると、早い県の分を落とします。
何に対する助成金か
制度の形は、設備投資等と賃上げの2つをセットで行うことが前提です。生産性向上に資する設備投資等(機械設備導入やコンサルティングなど)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、設備投資などにかかった費用の一部が助成されます。

支給される額の決まり方
助成される金額は、設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額と、助成上限額を比べて、いずれか安いほうの金額になります。つまり上限額だけを見ても、費用が小さければそこまで届きません。逆に費用が大きくても、上限額で止まります。
順番を間違えると対象外になる
事業場内最低賃金の引上げや設備投資等は、これから実施するものが助成の対象です。計画を立てて申請し、交付決定を受けたあとに計画どおり進め、結果を報告することで支給されます。見積りを取って先に発注してしまうと対象になりません。相見積りや機種選定は申請前に進めてよいものの、発注は交付決定後に回します。
従業員がいない事業場は対象外
労働者の事業場内最低賃金を引き上げるための制度なので、労働者がいない場合は対象になりません。代表者だけで回している事業所は、別の支援制度を探すことになります。岩手県の所管部局別の一覧は岩手県「補助・融資(商工労働観光部)」から、国の制度は中小企業庁「ミラサポplus」支援制度検索から当たります。
事業場内最低賃金の数え方
引き上げる対象になるのは「事業場内最低賃金」です。ここを取り違えると、計画そのものが組み直しになります。

事業場で最も低い時間給を指す
事業場内最低賃金は、事業場で最も低い時間給です。ただし業務改善助成金では、雇用保険被保険者で雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。入社3か月のパートの時間給がいちばん低い場合、その人を基準に計画を立てても要件を満たしません。
計算のもとになる規定
計算方法は、地域別最低賃金と同じく最低賃金法第4条および最低賃金法施行規則第1条または第2条の規定に基づいて算定されます。算入する手当が異なるため、時間給制・日給制・月給制で計算の手順が変わります。歩合給制の場合は、業務改善助成金として一定の計算方法によって算出されます。
迷ったら計算前に相談する
手当の形態が複雑で事業場内最低賃金の算出が難しい場合は、管轄の労働局雇用環境・均等部室または賃金課室に相談するよう案内されています。自社で計算しきってから相談すると、前提が違って作り直しになります。時間給の一覧を作った段階で持ち込むほうが早いです。
上限額と助成率は自社の区分で変わる
助成上限額は、事業場内最低賃金の引上げ額と、引き上げる労働者数によって変わります。助成率は、申請を行う事業場の引上げ前の事業場内最低賃金によって変わります。10人以上の上限額区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象になります。

3つの軸を先に決めてから表を見る
金額の表は、厚生労働省の令和8年度リーフレットに載っています(厚生労働省「業務改善助成金のご案内」)。自社の区分は、(1) いくら引き上げるか、(2) 何人の賃金を引き上げるか、(3) 引上げ前の事業場内最低賃金はいくらか、の3つで決まります。この3つを紙に書いてから表を見ると、読む行が1行に絞れます。
引き上げる人数のカウント方法は別資料に載っている
引き上げる労働者数の数え方は、申請マニュアルに詳しい説明があります。「同じ時間給の人が複数いる場合」「途中入社の人」などで数え方が変わるため、人数は自己判断で決めずにマニュアルの定義に合わせます。
特例事業者ならパソコンやタブレットも対象になる
助成対象となる経費は「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」です。通常はパソコンなどの汎用端末は対象外ですが、例外があります。
物価高騰等要件に該当する場合の拡大
特例事業者のうち物価高騰等要件に該当する場合は、通常は助成対象経費として認められていないパソコン、スマートフォン、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入も対象になります。AIツールを使うために端末を入れ替えたい事業場にとっては、ここが分かれ目です。
要件の確認は申出書の様式から入る
物価高騰等要件は、売上高総利益率または売上高営業利益率に関する申出書で確認する形になっています。厚生労働省のページに様式と記入例が置かれているため、先に記入例を見て、自社の決算書から出せる数字かどうかを確かめます。出せないなら、通常の対象経費だけで計画を組みます。
端末が入っても運用ルールは別に必要
端末を入れただけでは業務は変わりません。生成AIを業務に入れるなら、入力してよい情報の線引きを先に決めます(AI研修前に決める利用ルール)。助成金の実績報告でも、何にどう使ったかを説明することになります。
11月30日から逆算したスケジュール
期限は申請の期限です。支給までには、その後の工程が続きます。

事業完了期限は1月31日
令和8年度業務改善助成金を申請した場合の事業完了期限は、交付決定の属する年度の1月31日です。事業完了期限とは、導入機器等の納品日、導入機器等の支払完了日(銀行振込の振込日。クレジットカード等の場合は口座の引き落とし日)、賃金引上げ日(就業規則等の改正・適用日)のいずれか遅い日を指します。3つのうちどれか1つが2月にずれ込むと、期限を越えます。
延長される場合の条件
やむを得ない理由がある場合は、あらかじめ理由書とともに申請すれば、事業の完了期限が交付決定の属する年度の3月31日まで延長される場合があります。厚生労働省が挙げている例は、導入機器等の納入日が半導体不足等の納入業者の都合で1月31日以降になる場合、納入日が最短でも1月31日で支払日が2月1日以降になる場合などです。延長は交付決定後に必要が生じた場合も同じ扱いで、いずれも事前の申請が前提です。
現実的な進め方
11月30日が申請期限、1月31日が事業完了期限という2つの締切があるため、機器の納期が長いものほど早く動く必要があります。10月中に機種と見積りを確定し、11月中旬までに申請、交付決定後すぐ発注、年内納品、1月に賃金引上げの就業規則改正まで終える、という並びが安全側です。賃上げ関連の他の支援と時期が重なる場合は、岩手の物価高騰対策賃上げ支援金のような県内の制度とスケジュール表を1枚にまとめておきます。
申請書類に生成AIを使うときの線引き
書類作成の時間は圧縮できますが、任せてよい範囲は限られます。
任せてよい作業
交付要綱や申請マニュアルを貼り付けて「自社が確認すべき項目を箇条書きにして」と頼む使い方、社内説明用の要約、事業計画の文章を短く整える作業、提出前のチェックリスト作成。いずれも、こちらが渡した文書の範囲で完結します。
任せてはいけない作業
助成率や上限額をAIに聞くことです。年度が変わると数字も変わるため、古い年度の値が返ることがあります。金額は必ずリーフレットと交付要綱で確認します。要件に当てはまるかどうかの最終判断も、労働局への確認に置き換えます。
使える依頼文の例
添付は令和8年度業務改善助成金の交付要綱です。
この文書に書かれている内容だけを使って、当社が提出前に確認すべき項目を箇条書きにしてください。
金額・率・日付は文書中の表記をそのまま引用し、書かれていない数字は書かないでください。
判断が分かれる項目には「労働局に確認」と付けてください。
気をつけること
厚生労働省から委託を受けたと装って、助成金の活用を勧誘する事業者が存在するという情報が寄せられています。厚生労働省や労働局が、特定の事業者に助成金の勧誘を委託することはありません。手数料や報酬を目的に、本来受けることができない助成金の申請を提案している可能性があるとして、注意喚起が出ています。不正受給は処罰対象に該当し、公表される可能性があります。営業電話が来たら、その場で契約せず、労働局の窓口に制度名を伝えて確認します。
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よくある質問
Q. 岩手の申請期限は本当に11月30日ですか。
申請期間の決まり方は「発効日の前日または11月30日のいずれか早い日」です。岩手県の発効日は2026年12月1日の予定なので、前日の11月30日が期限になります。発効日は告示前の予定値のため、岩手労働局の発表で最終確認してください。
Q. 先に機器を買ってしまいました。対象になりますか。
事業場内最低賃金の引上げや設備投資等は、これから実施するものが助成の対象です。交付決定前に実施したものは対象外です。
Q. 助成率と上限額はいくらですか。
引上げ額・引き上げる労働者数・引上げ前の事業場内最低賃金の区分で変わるため、一律の値はありません。厚生労働省の令和8年度リーフレットの表で、自社の区分の行を確認してください。
Q. パソコンやタブレットは対象になりますか。
通常は対象外ですが、特例事業者のうち物価高騰等要件に該当する場合は、端末と周辺機器の新規導入も対象になります。
Q. 事業完了が1月31日に間に合わない見込みです。
やむを得ない理由がある場合は、あらかじめ理由書とともに申請することで、交付決定の属する年度の3月31日まで延長される場合があります。管轄の労働局雇用環境・均等部(室)に事前相談してください。
Q. 従業員が代表者だけです。使えますか。
労働者がいない場合は助成の対象になりません。
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