岩手県内では、県の「物価高騰対策賃上げ支援金」とは別に、市町村が独自に賃上げの支援金や補助金を出しています。2026年10月7日に各市町村の公式ページで確認したところ、北上市・花巻市・二戸市・九戸村・金ケ崎町の5市町村で、令和7年10月から令和8年9月までの賃上げを対象にした制度が受付期間中でした(予算に達した場合は期間内でも終了)。
県の支援金は、令和8年10月5日現在の申請金額が約25億円で、上限額の約98%に達しています(岩手県「物価高騰対策賃上げ支援金のお知らせ」)。市町村の制度には、県の支援金と併用できないもの、県の支給決定が前提のもの、市町村が独自に出すものがあり、どれを選ぶかで受け取れる額と手続きが変わります。
この記事では、5市町村の制度の額・上限・締切、県の支援金との関係、賃上げ額の数え方、12月1日の最低賃金1,090円との関係、申請前にそろえる書類と、生成AIに任せる作業の線引きをまとめます。内容は2026年10月7日時点の各公式ページの記載によるもので、県内33市町村のすべてを調べた一覧ではありません。
この記事の要点
- 県の物価高騰対策賃上げ支援金は、10月5日現在で申請金額が上限額の約98%。上限に達し次第、遅くとも11月13日で受付終了
- 北上市は時給換算40円以上の賃上げで1人3万8千円(上限190万円)。県の支援金とはどちらか一方しか使えない
- 花巻市は基本給等を平均4%以上上げた事業者に最大70万円。県の支援金の支給決定が前提
- 二戸市は1時間当たり80円以上の賃上げで1人4万円(最大200万円)。10月2日現在で予算執行率80%超
- 九戸村は60円以上の賃上げで1人3万円。村のFAQは県の支援金との併給を「可能」としている
- 金ケ崎町は県の支援金の上乗せで、県の交付決定を受けた事業者だけが申請できる
- どの制度も対象は令和8年9月30日までの賃上げ。12月1日の最低賃金1,090円に合わせた賃上げは対象時期の外
対象読者
北上市・花巻市・二戸市・九戸村・金ケ崎町に事業所がある中小企業や個人事業主の経営者、総務・経理の担当者。県の支援金に申請したか、これから申請するかを決めかねている事業所。
読了後にできること
自社の所在地で使える賃上げの支援金と、県の支援金との組み合わせ方が分かります。賃上げ額を時給に換算して要件を満たすか確かめ、締切から逆算して書類をそろえられます。
県の賃上げ支援金|10月5日現在で上限の約98%
県の支援金の要件
県の物価高騰対策賃上げ支援金の主な要件は次のとおりです(岩手県「物価高騰対策賃上げ支援金のお知らせ」、金ケ崎町「物価高騰対策賃上げ支援事業について」に掲載された県の支援金の概要)。

- 支給額は従業員1人あたり6万円、上限50人分(1事業所当たり最大400万円)
- 令和7年10月1日から令和7年12月1日までの間に、時給971円未満の従業員の賃金を時給1,031円以上に引き上げた場合は、1人当たり2万円を加算
- 賃上げの対象時期は令和7年10月1日から令和8年9月30日まで(賃金の支給が令和8年10月31日までのものを含む)
- 賃上げ対象従業員は県内事業所に勤務する正規・非正規の労働者。非正規は週所定労働時間20時間以上
- 賃上げ月の前月と比べて1時間当たり60円以上の引き上げ。引き上げ後の賃金支給実績が1月以上あり、引き上げ後の賃金水準を1年間継続すること
- 申請時点で、事業所内のすべての労働者の1時間当たりの賃金が最低賃金を上回っていること
支援金の制度の詳しい解説は岩手の物価高騰対策賃上げ支援金|1人6万円・申請の進め方【2026】にまとめています。
受付が終わる2つの条件
県の支援金は、岩手県全体で25億4,000万円を上限とし、上限に達し次第終了します。上限に達しない場合でも、令和8年11月13日(金)で受付を終えます。申請できるのは1つの事業者につき1回限りです。
特設ページの申請状況は2,000万円ごとに更新され、10月5日現在の申請金額は約25億円(上限額の約98%)でした。上限までの残りはわずかです。
市町村の賃上げ支援金一覧|10月7日時点
5市町村の額・上限・締切
2026年10月7日に各市町村の公式ページで確認した内容です。
| 市町村 | 賃上げの要件 | 1人当たりの額 | 上限 | 締切 | 県の支援金との関係 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北上市 | 時給換算40円以上 | 3万8千円 | 190万円(50人まで) | 12月25日(必着) | 併用不可(どちらかを選ぶ) |
| 花巻市 | 基本給等を平均4%以上 | 従業員数に応じた上限額まで | 70万円 | 12月25日(当日消印有効) | 県の支給決定が必要 |
| 二戸市 | 1時間当たり80円以上 | 4万円 | 200万円(50人分) | 12月28日 | 市のページに記載なし |
| 九戸村 | 1時間当たり60円以上 | 3万円(加算1万円あり) | 50人分 | 12月28日 | 併給可能(村のFAQ) |
| 金ケ崎町 | 県の支援金の上乗せ | 町のページに記載なし | 町のページに記載なし | 12月28日 | 県の交付決定が必要 |
出典:北上市「北上市中小企業賃上げ支援補助金」、花巻市「花巻市中小企業者等賃上げ支援奨励金のお知らせ」、二戸市「令和8年度二戸市賃上げ支援事業費補助金」、九戸村「九戸村物価高騰対策賃上げ支援補助金のお知らせ」、金ケ崎町「物価高騰対策賃上げ支援事業について」。
5市町村とも、賃上げの対象時期は令和7年10月1日から令和8年9月30日までです。どの制度も予算に達した場合は、締切の前でも受付を終えます。
表の見方
北上市の補助金は、市内の事業所に常時使用する従業員が1人以上いる中小企業者が対象で、国の重点支援地方交付金を活用しています。花巻市の奨励金の上限額は、市内の事業所に勤務する従業員の人数で決まり、1〜5人は5万円、6〜20人は20万円、21〜50人は50万円、51人以上は70万円です。
九戸村は、令和7年10月1日から令和7年12月1日までの間に時給971円未満の従業員を時給1,031円以上に引き上げた場合に、1万円を加算します。二戸市は、令和8年10月2日現在で予算執行率が80%を超えたと公表しています。金ケ崎町のページは申請先を金ケ崎町商工会としていて、補助額は町のページには書かれていません。
ほかの市町村の状況
遠野市のように、市町村のページで県の支援金を案内している例もあります(遠野市「岩手県 物価高騰対策賃上げ支援金」)。ここに無い市町村にも独自の制度がある可能性があるので、所在地の市町村の商工担当に確認してください。
奥州市の中小企業・小規模事業者設備導入支援事業は、賃上げの支援金ではなく設備の補助ですが、中小企業者設備導入支援の要件に「従業員へ賃上げ方針を表明すること」が入っていました。予算の上限に達したため、6月10日現在で受付を終了しています(奥州市「中小企業・小規模事業者を対象とした設備導入支援事業を実施します」)。
県の支援金との関係は3つの型
どちらか一方を選ぶ型|北上市
北上市の補助金は、県の支援金(賃上げ対象期間 令和7年10月〜令和8年9月)と同じ事業者が併用することはできません。市のページは、県の支援金の支給を受けていないことを対象の条件にしていて、「どちらかを御選択ください」と案内しています(北上市「北上市中小企業賃上げ支援補助金」)。

1人当たりの額は、県が60円以上の賃上げで6万円、北上市が40円以上の賃上げで3万8千円です。賃上げが40円以上60円未満で県の要件に届かない場合や、県の受付が上限で終わった場合には、北上市の補助金が選択肢になります。どちらを選ぶかは、申請の前に市の商業観光課に相談しておくと確実です。
県の支給決定が前提の上乗せ型|花巻市・金ケ崎町
花巻市の奨励金は、県の支援金(令和8年2月13日受付開始分)の支給決定を受けたうえで、市内の従業員の基本給等を平均4%以上引き上げた事業者が対象です。申請書類に、県の支給決定通知書の写しが入っています(花巻市「花巻市中小企業者等賃上げ支援奨励金のお知らせ」)。
金ケ崎町の補助金も、県の支援金の交付決定を受けた事業者が対象です。町のページは「県支援金の上乗せ分として実施」「町補助金のみの申請は不可」としています。県の受付が上限で終わると、県の支給決定を受けていない事業者は、この2つの制度を使えません。
市町村が独自に出す型|二戸市・九戸村
二戸市は1時間当たり80円以上の賃上げで1人4万円(最大200万円)、九戸村は60円以上の賃上げで1人3万円(上限50人分)です。
九戸村のFAQは、県の支援金を受給した事業者も「併給可能」としています。ただし、賃上げの前と後を比べて計算した年間の賃金昇給額が12万円を下回る場合は、補助金の対象外となる場合があると書いています(九戸村「九戸村物価高騰対策賃上げ支援補助金 FAQ」)。
二戸市のページには、県の支援金との併用についての記載が見当たりませんでした。併用を考える場合は、申請の前に市の商工観光流通課に確認してください。
賃上げ額の数え方|時給換算40円・60円・80円
月給の人は時給に換算する
県・北上市・二戸市・九戸村の要件は、賃上げ月の前月と比べた1時間当たりの賃上げ額です。北上市は40円以上、県は60円以上、二戸市は80円以上で、九戸村は県と同じ60円以上です。

月給の人は、月給を1か月平均の所定労働時間で割って時給に換算し、賃上げ月の前月と比較するのが一般的な考え方です。北上市は「資料_賃金の計算方法について」と「賃金計算シート」(Excel)を公開しているので、申請する制度の計算方法に合わせてください。
計算の例
説明のための例として、月給180,000円、1か月平均の所定労働時間が160時間の人を考えます。時給換算は1,125円です。月給を188,000円に上げると時給換算は1,175円で、差は50円です。
この場合、北上市の40円以上は満たしますが、県と九戸村の60円以上、二戸市の80円以上は満たしません。手当を含めるかどうかなど細かな扱いは制度ごとに違うため、最後は各制度の資料で確かめます。
花巻市は「平均4%以上」
花巻市は時給の差ではなく、市内の事業所に勤務する従業員の基本給等を平均4%以上引き上げることが要件です。たとえば基本給200,000円の人の4%は8,000円です。
交付額は、「市内に勤務する従業員全員の基本給等の引き上げ額」と、従業員人数に応じた交付上限額(最大70万円)のいずれか低い方です。
12月1日の最低賃金1,090円との関係
対象時期は9月30日までの賃上げ
岩手県の地域別最低賃金は、令和8年12月1日から1,090円になります。現行の1,031円から59円の引き上げです(厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」)。

一方、この記事の県と市町村の制度は、いずれも令和7年10月1日から令和8年9月30日までに行った賃上げが対象です。12月1日の最低賃金の引き上げに合わせて10月以降に行う賃上げは、対象時期の外になります。
12月の引き上げに使える国の制度
最低賃金の引き上げに合わせて設備投資なども行う場合は、厚生労働省の業務改善助成金が候補になります。事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、生産性を高める設備投資などを行った場合に、その費用の一部を助成する国の制度です。コースや申請の期限は厚生労働省「業務改善助成金」のページで確かめてください。
申請前にそろえる書類
共通して求められる書類
5市町村のページを見比べると、次の書類はほぼ共通して求められています。
- 申請書兼請求書(各市町村の様式)
- 対象となる従業員の一覧
- 賃金台帳の写し(賃上げ月とその前月)
- 労働条件通知書または雇用契約書の写し
- 振込先の口座が分かる書類(預金通帳の写しなど)
花巻市は、これに加えて県の支給決定通知書の写し、市内の従業員の賃上げを実施したことを証する書面(市内従業員代表の自署入り)、事業実態を確認できる資料(法人は直近決算の法人市民税申告書と法人事業概況説明書の写し)を求めています。二戸市は誓約書が必要です。北上市は、法人の場合に履歴事項全部証明書(取得後3カ月以内)が必要です。
申請先と期限
- 北上市:原則郵送(市役所本庁舎3階の商業観光課の相談窓口を利用した場合は、その場で提出可)。令和8年12月25日必着
- 花巻市:郵送で花巻商工会議所(運営事務局)へ。会員加入を問わず申請できる。令和8年12月25日の当日消印有効
- 二戸市:市の商工観光流通課。令和8年12月28日まで
- 九戸村:村のページの様式で申請。令和8年12月28日(月)まで
- 金ケ崎町:金ケ崎町商工会。令和8年12月28日(月)まで
締切までの段取り
県の支援金にまだ申請していない場合
県の受付は、上限に達し次第終わります。花巻市・金ケ崎町の上乗せを使う予定の事業所は、まず県の申請を済ませます。北上市の事業所は、県と市のどちらを選ぶかを先に決めます。
県の支給決定を待っている場合
花巻市・金ケ崎町は、県の支給決定(交付決定)を受けてからの申請です。決定通知書が届いたら写しを取り、市町の締切(12月25日・12月28日)から逆算して書類をそろえます。
予算の上限に注意
どの市町村も、予算に達した場合は締切の前でも受付を終えます。二戸市は10月2日現在で予算執行率が80%を超え、90%を超えたら知らせるとしています。申請の直前に、各ページの受付状況を見直してください。
生成AIに任せる作業と任せない作業
任せてよい作業
- 各市町村の募集ページの文章から、要件・額・上限・締切を同じ形の表に並べる下書き
- 時給換算の計算式(Excelの式)づくり
- 申請書類のチェックリストの下書き
- 従業員に賃上げを知らせる文書の下書き
任せない作業
- 要件に当てはまるかどうかの判断(最終の確認は市町村や事務局に行う)
- 実在の従業員の氏名や賃金を、外部の生成AIサービスに入力すること
- 申請書への最終の記入と金額の確定
- 締切や予算の状況の確認(必ず公式ページで最新の状態を見る)
プロンプトの例
次の文章は、岩手県内の市町村の賃上げ補助金の募集ページから写したものです。
1. 「賃上げの要件」「1人当たりの額」「上限」「申請期限」「県の支援金との併用」の5列の表にしてください。
2. 文章に書かれていない項目は「記載なし」としてください。推測で埋めないでください。
3. 金額と日付は、文章の表記のまま写してください。
(ここに募集ページの文章を貼る)
確かめること
- 表の額と日付が、公式ページの記載と一致しているか
- 「記載なし」の項目を、市町村や申請先に確認したか
- 予算の状況(執行率や受付終了のお知らせ)を申請の直前に見たか
よくある質問
Q. 県の支援金と北上市の補助金は両方受け取れますか?

A. 受け取れません。北上市のページは、県の物価高騰対策賃上げ支援金(賃上げ対象期間 令和7年10月〜令和8年9月)との同一事業者による併用はできないとして、どちらかを選ぶよう案内しています。
Q. 花巻市の奨励金だけを申請できますか?
A. できません。花巻市の奨励金は、県の支援金(令和8年2月13日受付開始分)の支給決定を受けていることが対象の条件で、申請には県の支給決定通知書の写しが必要です。金ケ崎町の補助金も、町補助金のみの申請はできません。
Q. 12月1日の最低賃金の引き上げに合わせた賃上げは対象になりますか?
A. この記事で扱った県と5市町村の制度は、令和7年10月1日から令和8年9月30日までの賃上げが対象です。10月以降の賃上げは対象時期の外です。設備投資と合わせて賃金を引き上げる場合は、厚生労働省の業務改善助成金を確認してください。
Q. 県の支援金はいつまで申請できますか?
A. 岩手県全体で25億4,000万円の上限に達し次第終了し、上限に達しない場合でも令和8年11月13日(金)で受付を終えます。10月5日現在の申請金額は約25億円で、上限額の約98%です。
Q. この記事に無い市町村にも制度はありますか?
A. この記事は、2026年10月7日に公式ページで確認できた5市町村をまとめたもので、県内33市町村のすべてを調べたものではありません。所在地の市町村の商工担当か、地域の商工会議所・商工会に確認してください。
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参考・出典
- 岩手県「物価高騰対策賃上げ支援金のお知らせ」(特設ページ・2026年10月7日確認)
- 北上市「北上市中小企業賃上げ支援補助金」
- 花巻市「花巻市中小企業者等賃上げ支援奨励金のお知らせ」(令和8年3月27日更新)
- 二戸市「令和8年度二戸市賃上げ支援事業費補助金」(2026年10月2日更新)
- 九戸村「九戸村物価高騰対策賃上げ支援補助金のお知らせ」
- 遠野市「岩手県 物価高騰対策賃上げ支援金」
- 九戸村「九戸村物価高騰対策賃上げ支援補助金 FAQ」(PDF)
- 金ケ崎町「【重点支援地方交付金活用事業】物価高騰対策賃上げ支援事業について」(2026年6月4日)
- 奥州市「中小企業・小規模事業者を対象とした設備導入支援事業を実施します」(2026年6月5日更新)
- 厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」(PDF)
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- 厚生労働省「業務改善助成金」