結論から言うと、岩手の介護事業所の人材不足そのものをAIが解決することはできませんが、「記録作成」「シフト表の下書き」「採用文書の作成」の3業務に絞ってAIを使えば、今いる職員の事務負担を確実に減らし、その分をケアと採用活動に回せます。特別なシステム投資は必須ではなく、月数千円の生成AIツールと運用ルールづくりから始められます。さらに岩手県には介護ソフト等の導入費を最大4/5補助する「介護テクノロジー導入等支援事業費補助金」があり、介護報酬にはテクノロジー活用を評価する「生産性向上推進体制加算」もあります。本記事では、過度な期待を排した現実的な効果と、明日から使える具体的な手順・プロンプト例、費用を抑える制度までをまとめます。
この記事の要点
- 岩手県の高齢化率は35.2%(令和5年)で全国平均29.1%を大きく上回り、介護職員の確保は構造的に厳しい。全国では2026年度に約240万人の介護職員が必要と推計されている
- AIが効くのは「記録作成」「シフト表の下書き」「採用文書」の3領域。逆に、身体介護そのもの・シフトの最終確定・採用の合否判断はAIに任せられない
- 利用者の氏名・病歴などの個人情報を一般の生成AIに入力しないルールづくりが導入の大前提
- 岩手県の「介護テクノロジー導入等支援事業費補助金」(令和8年度は事前協議が7月7日〜8月7日)と「生産性向上推進体制加算」で費用負担を抑えられる
対象読者:岩手県内の特養・老健・デイサービス・訪問介護・グループホーム等の施設長、事務長、管理者、生産性向上委員会の担当者
読了後にできること:自施設のどの業務からAIを試すか決められる/記録・シフト・採用それぞれのプロンプトをそのまま試せる/補助金・加算の窓口と次のアクションが分かる
岩手の介護人材不足はどれくらい深刻か
まず現状を数字で押さえます。感覚論ではなく、公的な統計・計画に基づいて確認しておくことが、経営判断と職員への説明の土台になります。
全国では2026年度に約240万人が必要
厚生労働省が2024年7月に公表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によると、全国で必要な介護職員数は2026年度に約240万人(2022年度比で約25万人増)、2040年度には約272万人(同約57万人増)と推計されています。2022年度時点の介護職員数は約215万人ですから、毎年数万人規模で増やし続けなければ需要に追いつかない計算です。
国はこれに対して、処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着促進・生産性向上、介護職の魅力向上、外国人材の受入環境整備という総合的な対策を掲げています。注目すべきは、この中に「生産性向上」が明確に位置づけられていることです。人を増やす施策だけでは足りず、今いる職員一人ひとりの業務負担を減らすことが国の方針としても求められています。AI・ICTの活用はまさにこの文脈にあります。
岩手県は高齢化率35.2%、全国を大きく上回る
岩手県の高齢者福祉・介護保険の県計画「いわていきいきプラン(2024〜2026)」によると、令和5年10月1日現在の県内65歳以上人口は403,825人、高齢化率は35.2%で、全国の29.1%を約6ポイント上回っています。介護需要の増加ペースに対して、生産年齢人口の減少が全国より早く進んでいるのが岩手の実情です。
同プランでは「介護を支える人材の確保と必要なサービスの基盤づくり」が柱の一つに据えられ、施策目標として「介護職員の離職者に占める勤続1年未満の者の割合」を令和4年度の42.6%から令和8年度に38.6%へ引き下げることが掲げられています。裏を返せば、岩手では離職者の4割超が勤続1年未満で辞めているということです。せっかく採用しても、記録・事務・シフトの負担が重い職場では定着しません。採用強化と業務負担の軽減はセットで取り組む必要がある——これが本記事の出発点です。
「人が採れないならAIで補う」の正しい意味
誤解のないように先に言っておくと、AIは介護職員の代わりに入浴介助や排泄介助をしてくれるわけではありません。AIが肩代わりできるのは、介護職員の勤務時間のうち直接ケア以外の部分——記録作成、書類作成、シフト表づくり、求人文書づくりといった「書く仕事」「段取りの仕事」です。
ここを圧縮できれば、同じ職員数でもケアに使える時間が増え、残業が減り、「記録のために残る」ことによる疲弊と離職を防げます。人材不足対策としてのAI活用とは、「人を減らす」ためではなく「今いる人が続けられる職場にする」ための取り組みです。
AIで補えること・補えないことを最初に線引きする
導入前に、現場と経営層で期待値をそろえておくことが失敗防止の第一歩です。以下の表を職員会議でそのまま使ってください。
| 業務 | AIで補える度合い | 備考 |
|---|---|---|
| 介護記録の文章化・清書 | 高い | メモや音声の下書きから記録文を生成。最終確認は職員 |
| 申し送り・カンファレンス資料の要約 | 高い | 長い記録を短時間で要点整理 |
| シフト表の下書き作成 | 中程度 | 条件整理と叩き台づくりは得意。最終確定は管理者の判断 |
| 求人票・採用広報文の作成 | 高い | ハローワーク求人票や自社サイトの文章づくりに有効 |
| 家族向けお知らせ・行事案内の文章 | 高い | 丁寧な文面の下書きが数分で作れる |
| 身体介護(移乗・入浴・排泄) | 補えない | 介護ロボット(リフト・見守り機器)は別枠。生成AIの守備範囲外 |
| ケアプランの決定・医療的判断 | 補えない | 専門職の判断業務。AIは資料整理の補助まで |
| 採用の合否判断・労務トラブル対応 | 補えない | 人と法律の領域。AIの出力を根拠に判断しない |
ポイントは、AIの出力はすべて「下書き」であり、確定させるのは常に人間だという原則です。この原則さえ守れば、介護現場でも安全にAIを使えます。
【実務1】記録業務:一番効果が出やすく、一番最初にやるべき領域
介護現場でAIの効果が最も分かりやすく出るのが記録業務です。ケース記録、経過記録、連絡帳、ヒヤリハット報告、事故報告書——介護の仕事は書き物の連続です。
やり方A:メモ書きからの清書(今日から無料で試せる)
ChatGPTなどの生成AIに、走り書きのメモを渡して記録文に整えてもらう方法です。最も手軽で、追加投資ゼロで始められます。
あなたは介護記録の作成を補助するアシスタントです。 以下のメモを、介護記録として適切な文体(です・ます調、客観的事実と職員の対応を分けて記載)に整えてください。 推測や、メモにない情報の追加はしないでください。 【メモ】 昼食 主食半分 副食ほぼ全量 むせ込み1回 水分とろみで150 午後 レク参加 表情よし 立ち上がり時ふらつきあり 見守り強化を申し送り
このように「メモにない情報を追加しない」と明示するのがコツです。生成AIは指示がないと、もっともらしい描写を勝手に足してしまうことがあります。記録は事実の記載が命なので、「創作禁止」を毎回プロンプトに入れると覚えてください。
やり方B:音声入力+AI要約
スマートフォンの音声入力で話した内容をテキスト化し、それをAIで記録文に整える方法です。手が塞がりがちな介護現場と相性がよく、「詰所に戻ってから思い出して書く」時間を減らせます。廊下やフロアで話す場合は、利用者の氏名を出さずに「A様」などの符号で話す運用にすると、後述の個人情報リスクも下げられます。
やり方C:介護記録ソフトのAI機能を使う(補助金の対象になり得る)
市販の介護記録ソフトには、音声入力やAIによる記録支援機能を備えたものが増えています。記録・請求・シフトが一体化したソフトを導入する場合、後述する岩手県の介護テクノロジー導入等支援事業費補助金の「介護ソフト」区分(上限100万〜250万円・補助率4/5)の対象になり得ます。どの製品が対象かは年度の実施要領と県への事前協議で確認してください。
記録業務での注意点
- 利用者の実名・住所・病名などを一般の生成AIに入力しない(詳細は後述の章で)
- AIが整えた文章は必ず職員が読み返し、事実と違う箇所がないか確認してから記録に残す
- ヒヤリハット・事故報告書は、AIで文章を整えるのは可だが、原因分析と再発防止策は現場で議論して書く
記録業務のAI活用についてさらに詳しくは、姉妹記事「岩手の介護現場でAIを記録・申し送り・家族対応に使う方法」で、申し送りや家族向け文書のプロンプト例まで踏み込んで解説しています。
【実務2】シフト調整:AIは「条件整理と叩き台づくり」に使う
シフト(勤務表)作成は、多くの施設で管理者やリーダーが月数時間から十数時間をかけている業務です。ここでのAIの正しい使い方は、「AIに勤務表を確定させる」ではなく「AIに叩き台と検算を手伝わせる」です。
ステップ1:シフトの制約条件を言語化する
実はシフト作成が属人化する最大の原因は、条件が管理者の頭の中にしかないことです。まずAIとの対話で条件を洗い出します。
介護施設の勤務表を作成するために、考慮すべき制約条件を整理したいです。 以下の情報をもとに、制約条件のチェックリストを作ってください。 ・ユニット型施設、職員は常勤10名・パート5名 ・勤務区分:早番、日勤、遅番、夜勤、明け、休み ・夜勤は月4〜5回まで、夜勤明けの翌日は原則休み ・パートは土日勤務不可の者が2名 他に確認しておくべき条件があれば質問してください。
AIは「連続勤務は何日まで許容か」「新人とベテランの組み合わせ制約はあるか」「希望休の優先順位は」といった観点を返してきます。この過程でシフト作成のルールが文書化されること自体が、属人化解消として大きな価値があります。管理者が急に休んでも他の人がシフトを組める状態に近づきます。
ステップ2:叩き台の生成と検算
条件が整理できたら、匿名化した職員リスト(職員A、職員B…)と条件を渡して1週間分ずつ下書きを作らせます。生成AIは複雑な数理最適化は苦手で、月全体を一度に完璧に組むことはできません。週単位で生成→人間が調整→「この表で夜勤回数の偏りと連続勤務日数をチェックして」と検算させる、という往復が現実的な使い方です。
ステップ3:本格化するならシフト作成機能付きソフトへ
職員数が多い施設や複数事業所を持つ法人では、勤務ルールを登録して自動作成するシフト機能を備えた介護ソフトの導入が視野に入ります。これも県の補助金の介護ソフト区分で相談できる領域です。汎用の生成AIで運用の型を作ってから専用ソフトに移行すると、要件が明確なぶん失敗しにくくなります。
シフトでの注意点
- 労働基準法・36協定の遵守チェックをAIの出力任せにしない。最終確認は管理者と労務担当が行う
- 職員の健康情報・家庭事情(介護や育児の事情など)はAIに入力しない。条件は「土日不可」「夜勤不可」など属性を伏せた形に変換して渡す
【実務3】採用:応募が来ない求人票をAIで書き直す
人材不足対策の本丸は採用です。岩手の介護求人で今すぐ改善できるのが「求人文書の質」です。ハローワークや求人サイトを見ると、仕事内容欄が「入所者の介護業務全般」の一行で終わっている求人が少なくありません。これでは施設の魅力も働き方も伝わりません。
求人票の仕事内容欄を書き直す
介護施設の求人票の「仕事内容」欄を書き直してください。 【施設の情報】 ・岩手県内のユニット型特別養護老人ホーム、定員50名 ・未経験者には3か月間、先輩職員が指導役としてつく ・記録はタブレット入力で、手書き作業はほぼない ・夜勤は月4回程度、夜勤手当あり ・車通勤可、無料駐車場あり 【条件】 ・未経験者が「自分にもできそう」と感じる具体的な表現にする ・1日の仕事の流れが想像できるようにする ・誇張や、事実にない待遇を書かない ・400字以内
ポイントは、事実を箇条書きでAIに渡し、表現だけを整えさせることです。「アットホームな職場です」のような中身のない定型句ではなく、「記録はタブレットで手書きほぼなし」「指導役が3か月つく」といった応募者の不安に答える具体的事実を盛り込むのが、応募率を上げる王道です。待遇の誇張はミスマッチ離職につながるので、AIに対しても「事実にないことを書かない」と明示します。
採用まわりでAIが下書きできる文書
- ハローワーク求人票・求人サイトの原稿(媒体ごとの文字数に合わせた出し分け)
- 施設ホームページの採用ページ(先輩インタビューの質問設計、働き方紹介)
- 面接の案内メール、応募者への合否連絡文(不採用通知も丁寧な文面に)
- 実習生・職場見学の受け入れ案内
- 職員紹介制度(リファラル採用)の社内告知文
これらは1本ずつは小さな作業ですが、合計すると採用担当者の相当な時間を占めています。AIで下書きを量産し、人間は「事実確認と最終判断」に集中する体制に変えるだけで、採用活動の回転速度が上がります。
採用での注意点
- 応募者の履歴書・個人情報をAIに入力しない
- 合否の判断や応募者の評価をAIにさせない(あくまで文書作成の補助まで)
- 給与・手当・休日数は必ず現行の就業規則・雇用契約と突き合わせて確認する
導入の大前提:個人情報を入れないルールをつくる
介護事業所がAIを使ううえで最も重要なのがこの章です。利用者の氏名、住所、病歴、心身の状況、家族関係などは、個人情報保護法上の個人情報であり、病歴等は特に取り扱いに配慮が必要な「要配慮個人情報」に当たります。一般向けの生成AIサービスに安易に入力してはいけません。
最低限の運用ルール(そのまま施設内規程の叩き台にできる)
- 入力禁止情報を明文化する:利用者・家族・職員の氏名、住所、電話番号、生年月日、病名・服薬情報、顔写真は入力しない
- 符号化して使う:記録の下書きでは「A様」「利用者B」と表記し、AIの出力を記録システムに転記する際に正式な氏名に戻す
- 学習に使われない設定・プランを選ぶ:業務利用では、入力データがAIの学習に使われない設定(オプトアウト)や法人向けプランを選択する
- 使ってよいツールを施設として指定する:職員が個人アカウントで勝手に使う「野良AI利用」が一番危ない。公式に1つ導入して窓口を作るほうが安全
- AI出力の確認責任者を決める:記録・文書として確定する前に誰が確認するかを決めておく
「禁止」だけを打ち出すと職員は隠れて使うようになります。「この範囲なら使ってよい」を明確にして、安全な使い方を教育するのが現実的な統制です。
費用を抑える:岩手県の補助金と介護報酬の加算
AI・ICT導入の費用負担を軽くする制度が、県の補助金と介護報酬の加算の2階建てで用意されています。
岩手県 介護テクノロジー導入等支援事業費補助金
岩手県は、介護従事者の身体的負担の軽減や業務効率化のため、介護ロボット・ICTの導入経費を補助する「介護テクノロジー導入等支援事業費補助金」を実施しています。令和8年度の主な内容は次のとおりです(詳細は必ず県の公式ページと実施要領で確認してください)。
| 区分 | 対象 | 上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 介護テクノロジー導入(移乗・入浴支援等) | 介護ロボット等の導入 | 100万円/台 | 4/5 |
| 介護ソフト等 | 記録・請求・シフト等の介護ソフト導入 | 職員数に応じ100万〜250万円 | 4/5 |
| パッケージ型導入 | 複数テクノロジーの一括導入 | 1,000万円/事業所 | 4/5 |
| 業務改善支援 | コンサルティング費用 | 48万円/事業所 | 4/5 |
対象は、県内で介護保険法に基づくサービスを提供する事業所のほか、養護老人ホーム・軽費老人ホーム等です。令和8年度は事前協議の受付期間が令和8年7月7日〜8月7日と公表されており、本記事公開時点では受付終盤です。期限を過ぎた場合も、次年度に向けて「どの業務に何を入れるか」を今のうちに固めておくことを勧めます。また、導入区分の活用には業務改善支援(コンサルティング)の受講が要件とされている点にも注意してください。問い合わせは県長寿社会課の担当窓口(メール)で受け付けられています。
生産性向上推進体制加算(令和6年度介護報酬改定で新設)
施設系・居住系サービスでは、テクノロジーを活用した生産性向上の取り組みを続けることで、介護報酬の「生産性向上推進体制加算」を算定できます。厚生労働省の解説資料によると、単位数と主な要件は次のとおりです。
- 加算(Ⅱ):10単位/月(利用者1人あたり)——利用者の安全・ケアの質・職員の負担軽減を検討する委員会の開催、見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入、年1回以上の効果データ提供など
- 加算(Ⅰ):100単位/月(利用者1人あたり)——(Ⅱ)の要件を満たしたうえで成果が確認され、テクノロジーを複数導入、介護助手の活用等の役割分担の取り組み、年1回以上のデータ提供など
つまり国の制度設計は「ICTを入れて、委員会で改善を回し、効果を測る」事業所に報酬で報いる形になっています。本記事で紹介した記録・シフトのAI活用は、この加算の委員会活動・業務改善の取り組みとして位置づけて進めると、現場改善と報酬算定が一本の線でつながります。対象サービスや届出の詳細は、厚労省資料と指定権者(県・市町村)への確認が必要です。
補助金の全体像は「岩手県のAI・DX導入で使える補助金ガイド」も参考にしてください。
よくある失敗パターンと回避策
| 失敗パターン | 何が起きるか | 回避策 |
|---|---|---|
| いきなり全部署で一斉導入 | 使いこなせる人と使えない人の差が広がり、不満で頓挫 | 記録業務×1ユニットなど、範囲を絞って小さく始める |
| AIの出力を確認せず記録に転記 | 事実と異なる記録が残り、監査・事故対応で問題化 | 「AI出力は下書き、確定は人間」を規程に明記する |
| 個人アカウントでの野良利用を放置 | 利用者情報が外部サービスに入力されるリスク | 施設公認のツールと入力禁止ルールを先に整備する |
| 「AIで人を減らせる」と説明してしまう | 職員が自分の雇用への脅威と受け取り、協力が得られない | 「残業と持ち帰り仕事を減らすため」と目的を正しく伝える |
| ベテランの反発を「抵抗勢力」扱いする | 現場の知恵が反映されず、使われないツールになる | 記録に一番時間を取られている職員から巻き込み、改善の主役にする |
| 補助金ありきで高機能システムを購入 | 機能過多で定着せず、保守費だけ残る | まず無料〜低コストで業務の型を作り、必要が確認できた機能だけ投資する |
最初の一歩:小さく始める導入手順
順序としては、次の流れが岩手の中小規模事業所で最も現実的です。
- 現状の棚卸し:職員へのヒアリングで「一番時間を取られている書き物」を特定する(多くの場合、経過記録かヒヤリハット報告)
- ルールを先に決める:入力禁止情報・使用ツール・確認責任者を1枚の文書にする
- 1業務×少人数で試す:例えば「1ユニットの記録清書」だけをリーダー2〜3名で試し、所要時間の変化をメモする
- 効果を数字で共有する:「記録1件あたり◯分→◯分になった」を職員会議で共有し、対象業務を広げる
- 制度に載せる:効果が確認できた段階で、介護ソフト導入は県補助金の事前協議へ、施設系サービスは生産性向上推進体制加算の算定準備へ進む
この「試す→測る→広げる→制度に載せる」の順番を守ると、投資の失敗も職員の反発も最小化できます。特養・老健など施設系での進め方は「岩手の特養・老健でのAI活用ガイド」、訪問系の記録は「岩手の訪問看護・在宅ケアのAI記録活用」も参考になります。介護以外も含めた県内の人手不足対策の全体像は「岩手の人手不足をAIで乗り切る実践ガイド」にまとめています。
よくある質問
Q. パソコンが苦手な職員が多くても導入できますか?
できます。生成AIは「話し言葉で頼めば文章で返ってくる」道具なので、従来の業務システムより習得の壁は低いのが実際です。スマートフォンの音声入力と組み合わせれば、キーボード操作が苦手な職員でも使えます。導入時は操作研修よりも「何を入力してよくて、何がダメか」のルール教育に時間をかけてください。
Q. 費用はどれくらいかかりますか?
試すだけなら無料枠のある生成AIで始められます。業務利用として法人向けプランを契約する場合は1人あたり月数千円程度が目安です(各サービスの現行料金は公式サイトで確認してください)。記録・シフト一体型の介護ソフトを入れる段階では数十万円〜になりますが、岩手県の補助金(補助率4/5)の対象になり得るため、実質負担は大きく圧縮できる可能性があります。
Q. AIの記録は監査で問題になりませんか?
記録の作成主体はあくまで職員であり、AIは文章化の補助です。職員が事実を確認して確定した記録であれば、下書きにAIを使ったこと自体が問題になる建て付けではありません。ただし、事実と異なる内容がAIによって紛れ込んだまま確定するのは重大な問題です。「AI出力の確認手順」を施設の記録規程に組み込み、確認の証跡を残す運用にしてください。
Q. 人材不足の解決にどこまで効きますか?
正直に言えば、AIだけで人材不足は解決しません。効くのは「離職の抑制」(記録負担・残業の削減)と「採用の改善」(求人文書の質と量の向上)を通じた間接的な効果です。逆に言えば、県計画が示すとおり離職者の4割超が勤続1年未満で辞めている現状では、業務負担の軽減は採用強化と同じかそれ以上に費用対効果の高い打ち手です。
まとめ:記録から始めて、制度で費用を抑え、定着につなげる
岩手の介護人材不足は、高齢化率35.2%という構造の上にあり、今後さらに厳しくなることが公的推計からも明らかです。その中で介護事業所が今すぐ打てる現実的な手が、記録・シフト・採用の3業務へのAI活用でした。
- 記録:メモ・音声からの清書で「書くために残る」時間を削る。創作禁止と人間の最終確認を徹底する
- シフト:条件の言語化と叩き台・検算にAIを使い、属人化を解消する。確定は管理者
- 採用:事実に基づく具体的な求人文書をAIで量産し、応募者の不安に答える
- 費用:岩手県の介護テクノロジー導入等支援事業費補助金(補助率4/5)と生産性向上推進体制加算を組み合わせる
Uravationでは、岩手県内の介護・福祉事業所を含む地域企業向けに、生成AI導入の研修・伴走支援を行っています。「自施設のどの業務から始めるべきか」「職員向けのルールと研修をどう設計するか」といった段階からの相談も可能です。まずは現状の業務棚卸しからお気軽にご相談ください。