岩手県ふるさと振興部が2026年3月18日に公表した「毎月勤労統計調査地方調査結果 令和7年平均」によると、岩手県の事業所(規模5人以上)で働く人の1人平均月間総実労働時間は141.6時間でした。同じ資料に並んでいる全国(確報)は135.1時間で、岩手のほうが月に6.5時間長くなっています。
2026年10月4日時点で、県が公表している年平均の結果はこの令和7年平均が最新です。この記事では、岩手県「毎月勤労統計調査地方調査」のページに掲載されている令和7年平均の数字をもとに、労働時間の言葉の意味、全国との差の中身、業種ごとの違い、平均を読むときの注意、自社の勤怠データと並べるときに生成AIへ任せてよい作業を整理します。
この記事の要点
- 令和7年平均の岩手県(規模5人以上)の総実労働時間は月141.6時間で、前年比1.7%減でした。所定内労働時間は132.7時間(1.9%減)、所定外労働時間は8.9時間(0.9%増)です。
- 全国(確報)は総実労働時間135.1時間、所定内労働時間125.3時間、所定外労働時間9.8時間でした。岩手は総実労働時間で6.5時間長く、所定外労働時間では0.9時間短くなっています。
- 出勤日数は岩手が月18.6日、全国が17.4日です。1日あたりに直すと岩手は約7.6時間、全国は約7.8時間で、月の差は主に出勤日数の差から来ていると読めます(筆者の計算)。
- 規模30人以上の事業所では、総実労働時間145.0時間(0.1%増)、所定外労働時間10.5時間(4.9%増)でした。
- 業種別(規模5人以上)では、運輸業、郵便業が164.2時間で最も長く、所定外労働時間は19.1時間(65.4%増)でした。宿泊業、飲食サービス業は103.2時間です。
- 岩手のパートタイム労働者比率は26.9%で、全国の31.31%より低い値です。平均の労働時間はパートの比率や業種の構成でも変わるため、そのまま「働き方の長さ」とは言い切れません。
- 生成AIは、勤怠データの集計表を文章にする作業や、県の業種別の数字と並べる表の下書きに向いています。従業員の氏名や個人の勤怠記録は入力しません。
対象読者
- 岩手県内の中小企業の経営者、総務・人事・労務の担当者
- 求人票や会社説明で、自社の働き方を県の数字と比べて説明したい方
- 残業の削減や業務の効率化を、数字を根拠に社内で提案したい方
読了後にできること
- 総実労働時間・所定内労働時間・所定外労働時間の違いを説明できる
- 岩手と全国の差を、出勤日数と1日あたりの時間に分けて読める
- 自社の業種の欄を選び、自社の勤怠データと並べられる
- 生成AIに任せる作業と、人が確かめる作業を分けられる
毎月勤労統計調査地方調査は岩手県の労働時間の年報
毎月勤労統計調査(通称「毎勤」)は、統計法に基づく基幹統計です。岩手県の地方調査は、県内の毎月の賃金、労働時間及び雇用の変動を明らかにすることを目的としていて、結果は県ふるさと振興部が公表しています。

調査の対象と公表
結果には、毎月の「月報」と、1年分をまとめた「年平均」があります。令和7年平均の資料には2026年(令和8年)3月18日の日付が入っていて、岩手県の統計ページからPDF版とエクセル版を取得できます。資料の冒頭には、この調査が「労使間における労働時間、給与等の改定の基礎資料」として使われると書かれています。
数字は「事業所規模5人以上」と「事業所規模30人以上」の2つの区分で載っています。従業員が5人から29人の事業所も含めて見たいときは5人以上、中規模以上の事業所に絞りたいときは30人以上を使います。この記事では、特に断りのない数字は規模5人以上・調査産業計の値です。
3つの労働時間の言葉
資料の用語の説明は次のとおりです。
- 所定内労働時間:事業所の就業規則で定められた正規の始業時刻と終業時刻との間から、休憩時間を差し引いた実労働時間
- 所定外労働時間:早出、残業、臨時の呼出、休日出勤等の実労働時間
- 総実労働時間:所定内労働時間と所定外労働時間の合計
実労働時間には休憩時間を含めません。運輸関係の労働者などのいわゆる手待時間は含め、本来の職務外として行われる宿日直の時間は含めない、という決まりもあります。自社の勤怠データと並べるときは、この3つの言葉の範囲をそろえるところから始めます。
前年比は指数から計算されている
表の前年比には「指数により計算しています」という注記があります。資料の説明では、すでに公表した実数値は過去にさかのぼって修正していないため、時系列で比べるときは原則として指数を使うよう求めています。前年の資料の実数と今年の実数を引き算した値は、資料の前年比と合わないことがあります。前年からの増減を書くときは、資料に載っている前年比をそのまま使います。
岩手は月141.6時間、全国より6.5時間長い
令和7年平均の資料には、全国(確報)と岩手県の結果を1枚にまとめた表があります。主な値を並べると次のとおりです(岩手県「毎月勤労統計調査地方調査結果 令和7年平均」)。

| 項目(規模5人以上・調査産業計) | 岩手県 | 全国(確報) |
|---|---|---|
| 総実労働時間 | 141.6時間(前年比1.7%減) | 135.1時間(前年比1.4%減) |
| 所定内労働時間 | 132.7時間(1.9%減) | 125.3時間(1.3%減) |
| 所定外労働時間 | 8.9時間(0.9%増) | 9.8時間(2.5%減) |
| 出勤日数 | 18.6日(前年差0.2日減) | 17.4日(前年差0.3日減) |
| パートタイム労働者比率 | 26.9%(前年差1.8ポイント増) | 31.31%(前年差0.45ポイント増) |
全国の値は厚生労働省の毎月勤労統計調査の確報で、県の資料も「最新のデータについては厚生労働省のホームページを確認してください」と注記しています。
所定内は7.4時間長く、所定外は0.9時間短い
差を項目ごとに見ると、総実労働時間の6.5時間の差は、所定内労働時間の差(132.7時間と125.3時間で7.4時間)から来ています。所定外労働時間は岩手が8.9時間、全国が9.8時間で、岩手のほうが0.9時間短い値です。「岩手は残業が多いから労働時間が長い」という読み方は、この表からは成り立ちません。
1日あたりに直すと差は逆になる
出勤日数は岩手が月18.6日、全国が17.4日で、岩手のほうが1.2日多くなっています。総実労働時間を出勤日数で割ると、岩手は約7.61時間、全国は約7.76時間です(141.6÷18.6、135.1÷17.4の筆者の計算)。1日あたりでは全国のほうが少し長く、月の総実労働時間の差は、主に出勤日数の差から来ていると読めます。
年間に直した目安
月の値を12倍すると、岩手は約1,699時間、全国は約1,621時間で、差は約78時間です(筆者の計算)。資料の値は1か月平均なので、年間の数字として資料に書くときは「月平均の12倍で試算」と添えます。岩手労働局「労働時間の現状(令和6年版)」には、毎月勤労統計調査をもとにした岩手県と全国の年間総実労働時間の推移がグラフで載っているので、年ごとの流れを見たいときはこちらもあわせて開きます。
規模30人以上では所定外労働時間が4.9%増えた
規模30人以上の事業所に絞ると、総実労働時間は145.0時間(前年比0.1%増)、所定内労働時間は134.5時間(0.4%減)、所定外労働時間は10.5時間(4.9%増)でした。規模5人以上では総実労働時間が1.7%減ったのに対し、30人以上ではほぼ横ばいで、所定外労働時間は増えています。
30人以上の業種別では、製造業の総実労働時間が161.2時間(0.7%増)、所定外労働時間が14.0時間(9.5%増)、建設業の所定外労働時間が13.9時間(30.3%増)でした。自社が30人以上の規模なら、5人以上の欄ではなく30人以上の欄と並べたほうが、条件の近い比較になります。
業種別|運輸業、郵便業は164.2時間、宿泊業、飲食サービス業は103.2時間
規模5人以上の業種別の値から、主な業種を抜き出すと次のとおりです。数字はすべて県の令和7年平均の表2の値です。

| 業種(規模5人以上) | 総実労働時間 | 前年比 | 所定外労働時間 | 前年比 | 出勤日数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸業、郵便業 | 164.2時間 | 9.3%増 | 19.1時間 | 65.4%増 | 20.3日 |
| 不動産業、物品賃貸業 | 160.7時間 | 15.4%増 | 17.4時間 | 83.7%増 | 19.0日 |
| 建設業 | 160.1時間 | 0.8%増 | 11.9時間 | 34.0%増 | 20.2日 |
| 製造業 | 157.7時間 | 1.3%減 | 12.5時間 | 3.0%増 | 19.1日 |
| 情報通信業 | 156.8時間 | 4.0%減 | 13.6時間 | 17.2%減 | 19.1日 |
| 医療、福祉 | 137.8時間 | 1.6%減 | 5.1時間 | 0.8%減 | 18.4日 |
| 卸売業、小売業 | 129.9時間 | 8.2%減 | 6.4時間 | 26.9%減 | 18.5日 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 103.2時間 | 3.0%減 | 5.4時間 | 2.2%増 | 15.6日 |
長い業種は運輸・建設・製造
総実労働時間が長いのは、運輸業、郵便業(164.2時間)、不動産業、物品賃貸業(160.7時間)、建設業(160.1時間)、製造業(157.7時間)です。運輸業、郵便業と建設業は出勤日数も月20日を超えていて、県の調査産業計の18.6日より多くなっています。
所定外労働時間が大きく増えた業種
前年比で所定外労働時間が大きく増えたのは、不動産業、物品賃貸業(83.7%増)、運輸業、郵便業(65.4%増)、建設業(34.0%増)です。反対に、卸売業、小売業は所定外労働時間が26.9%減、総実労働時間も8.2%減でした。業種によって向きがはっきり分かれているので、調査産業計の「1.7%減」だけで県内の働き方を語らないようにします。
短い業種は出勤日数も少ない
宿泊業、飲食サービス業は総実労働時間103.2時間、出勤日数15.6日で、どちらも表の中で最も少ない値です。短時間で働く人が多い職場ほど1人平均の時間は短く出やすいため、業種の平均が短いことと、正社員の働き方が楽であることは別の話として扱います。
平均の労働時間を読むときの3つの注意
県の数字を自社や他の地域と比べる前に、次の3点を確かめます。どれも資料の注記や表の構成から分かることです。

パートタイム労働者比率が違う
1人平均の労働時間は、短時間で働くパートタイム労働者を含めた平均です。岩手のパートタイム労働者比率は26.9%、全国は31.31%で、岩手のほうが低い値です。パートの比率が低い地域や業種では、平均の労働時間は長めに出やすくなります。岩手の比率は前年差1.8ポイント増で、比率が動くと平均も動きます。
規模と業種の構成が違う
調査産業計は、業種ごとの値を働く人の数で重みづけした平均です。県内に製造業や建設業の働く人が多ければ、調査産業計も長めに出ます。県の令和7年平均では、規模5人以上の常用労働者420,948人のうち、製造業が76,704人、卸売業、小売業が74,474人でした。全国と比べるときは、調査産業計だけでなく、自社の業種の欄どうしを並べます。
実数の前年差を自分で計算しない
前の節のとおり、前年比は指数から計算されていて、実数の引き算とは一致しないことがあります。資料には、令和6年1月分で労働者数の推計を更新(ベンチマーク更新)したことの注記もあります。社内資料に前年からの変化を書くときは、資料の前年比をそのまま引用し、自分で計算した値には「試算」と書き添えます。
賃金と並べると「1時間あたり」の差が大きくなる
同じ資料の賃金の表では、令和7年平均の岩手県(規模5人以上)の所定内給与は233,551円(前年比0.1%増)、全国(確報)は267,532円(2.0%増)でした。月額で比べると、岩手は全国の約87%です(筆者の計算)。
所定内給与を所定内労働時間で割ると、岩手は約1,760円、全国は約2,135円で、岩手は全国の約82%になります(233,551÷132.7、267,532÷125.3の筆者の計算)。岩手は所定内労働時間が長いため、1時間あたりに直すと月額より差が広がります。
この1時間あたりの値は、パートタイム労働者も含めた平均を割った目安で、個人の時給ではありません。最低賃金を満たしているかの判定にも使えません。賃金の統計の読み方は、岩手県の賃金統計2026|6月の現金給与と業種差と岩手県の平均月給275,000円|男女・年齢・産業別の読み方で詳しく扱っています。
自社の労働時間を県の数字と並べる手順
県の数字は、自社の働き方を社内で説明したり、求人の説明で「県の業種平均と比べてどうか」を示したりするときの物差しになります。並べる作業は、区分を決める、自社の月平均を出す、同じ欄と並べる、差を1行で書く、出典を書く、の順で進めます。

5つの手順
- 区分を決める:自社の従業員数で「規模5人以上」か「規模30人以上」かを選び、自社の業種の欄を決めます。
- 自社の月平均を出す:勤怠システムから1年分の所定内労働時間、所定外労働時間、出勤日数を出し、1人1か月あたりの平均にします。
- 同じ欄と並べる:県の表の同じ業種・同じ規模の欄を横に置きます。
- 差を1行で書く:「所定外労働時間は県の製造業より月○時間短い」のように、どの項目の差かを明記します。
- 出典を書く:「岩手県ふるさと振興部『毎月勤労統計調査地方調査結果 令和7年平均』(2026年3月18日)」と、規模と業種を添えます。
勤怠データから月平均を出すときの注意
県の調査はパートタイム労働者を含めた平均です。正社員だけの平均と比べると、自社が長く見えます。自社の値は「全員」と「正社員だけ」の2通りを出しておき、県の数字と並べるのは「全員」のほうにします。所定外労働時間には、残業だけでなく、早出、臨時の呼出、休日出勤も入ります。勤怠システムの「残業時間」の欄にこれらが入っているかを確かめます。
生成AIに任せる作業と、人が確かめる作業
生成AIは、集計済みの数字を文章や表にする作業で手間を減らせます。一方で、どの欄と比べるかの判断や、数字そのものの確認は人が行います。
任せる作業
- 自社の集計表(部署別・月別の平均値)をもとに、社内会議用の説明文の下書きを作る
- 県の業種別の表と自社の値を並べた比較表の形を作る
- 「所定外労働時間が多い月」の共通点を、集計表から箇条書きで挙げてもらう
- 求人票や会社説明の文章で、数字の書き方(出典・規模・業種の添え方)をそろえる
入力しない情報
従業員の氏名、社員番号、個人ごとの勤怠記録、健康に関する情報は入力しません。部署別や月別に集計した平均値だけを渡します。社外のAIサービスを使う場合は、社内の利用ルールに従います。ルールがまだない場合は、AI研修前に決める利用ルール完全ガイドを参考に、入力してよい情報の範囲を先に決めます。
プロンプトの例
次の表は、当社(岩手県内・製造業・従業員40人)の令和7年の1人1か月平均の労働時間です(全員の平均)。岩手県の毎月勤労統計調査地方調査(令和7年平均)の規模30人以上・製造業の値(総実労働時間161.2時間、所定外労働時間14.0時間)と並べた比較表を作り、差を1文ずつで説明してください。県の数字は私が書いた値だけを使い、ほかの数字を足さないでください。
出す前に確かめる3点
- 県の数字が、資料の同じ規模・同じ業種の欄の値と一致しているか
- 自社の値が「全員の平均」で、所定外労働時間に早出や休日出勤が含まれているか
- 前年比や年間の換算など、自分で計算した値に「試算」と書き添えているか
県内の相談先
労働時間の短縮や就業規則の見直しを進めたいときは、岩手労働局の賃金関係のページで案内されている岩手働き方改革推進支援センターに相談できます。同ページは、このセンターで「労働関係助成金の活用のほか就業規則の作成方法、賃金規定の見直しなどの相談が受けられます」と案内しています。
統計の数字そのものの意味や掲載場所は、岩手県の統計ページ(ふるさと振興部)と、岩手労働局の事例・統計情報のページで確かめられます。職場の健康管理と長時間労働の対策は、全国労働衛生週間2026|岩手企業の準備とAI活用でも整理しています。
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よくある質問
Q. 岩手県の労働時間は全国と比べて長いですか。
A. 令和7年平均の規模5人以上・調査産業計で、岩手県の1人平均月間総実労働時間は141.6時間、全国(確報)は135.1時間で、岩手のほうが月に6.5時間長い値です。出勤日数が岩手は18.6日、全国は17.4日で、差は主に出勤日数の差から来ていると読めます。
Q. 岩手県の残業時間(所定外労働時間)はどれくらいですか。
A. 令和7年平均の規模5人以上で月8.9時間(前年比0.9%増)です。全国(確報)は9.8時間で、岩手のほうが0.9時間短くなっています。規模30人以上では10.5時間(4.9%増)でした。
Q. 年間の総実労働時間はどう出しますか。
A. 県の資料の値は1か月平均です。月の値を12倍すると、岩手は約1,699時間、全国は約1,621時間になります。資料に書くときは「月平均の12倍で試算」と添えます。
Q. 業種によってどれくらい違いますか。
A. 規模5人以上では、運輸業、郵便業が164.2時間で最も長く、宿泊業、飲食サービス業が103.2時間でした。建設業は160.1時間、製造業は157.7時間、医療、福祉は137.8時間です。
Q. この統計はいつ、どこで公表されますか。
A. 岩手県ふるさと振興部が、毎月の月報と年平均を県の統計ページで公表しています。令和7年平均の資料の日付は2026年3月18日です。2026年10月4日時点では、令和8年7月分までの月報が掲載されています。
Q. 自社の勤怠データを生成AIに入力してもよいですか。
A. 部署別や月別に集計した平均値なら、比較表や説明文の下書きに使えます。従業員の氏名、社員番号、個人ごとの勤怠記録は入力しません。社外のAIサービスを使う場合は、社内の利用ルールに従ってください。
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