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岩手の弁護士・法律事務所×AI|契約書チェックと非弁行為の境界【2026】

岩手の弁護士・法律事務所×AI|契約書チェックと非弁行為の境界【2026】

結論:弁護士本人が自分の受任事件でAIを契約書チェックの下書き・一次確認に使うこと自体は、弁護士法72条が禁じる「非弁行為」には当たりません。同条が規制するのは非弁護士(法人)が報酬目的で法律事務を扱うことであり、資格を持つ弁護士自身がAIを補助ツールとして使う場面はそもそも規制の対象外です。ただし、2023年8月1日に法務省が公表した「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」は、AI契約審査を提供する“事業者”側の適法性を整理したものであり、論点が別であることを理解しておく必要があります。

岩手弁護士会は全国52会の中でも小規模で、2024年4月時点で会員111名、その約3分の2が盛岡市に集中しています(出典:岩手弁護士会公式情報、日本弁護士連合会)。県土は広く、単独開業や少人数事務所が多いため、契約書レビュー・相談対応・書面作成を弁護士自身が一人でこなす場面が集中しやすい構造です。この記事では、岩手の弁護士・法律事務所を想定し、契約書チェック、相談予約の一次対応、判例・法令リサーチ、事務所だよりの発信まで、AIを安全に使い分ける実務手順を整理します。

この記事の要点

  • 弁護士自身が自分の事件でAIを契約書チェックの補助に使うのは非弁行為ではない。弁護士法72条の規制対象は非弁護士(法人)が報酬目的で法律事務を扱うことである
  • 2023年8月1日の法務省ガイドラインは「事件性の要件」「鑑定等の要件」「報酬目的の要件」のいずれかを満たさなければAI契約審査サービスは72条に違反しないと整理した
  • 日弁連は2025年に「生成AI利活用に関する注意事項」を公表。守秘義務・ハルシネーション対策・最終責任の3点が実務上の核心
  • 依頼者を特定できる情報を外部の生成AIにそのまま入力するのは守秘義務違反のリスクがある。抽象化した情報で下書きさせる運用が必要
  • AIが出す判例・条文はもっともらしい誤りを含むことがあるため、一次情報での検証と確認記録が欠かせない

対象読者

  • 岩手県内で開業する弁護士・法律事務所の代表者、勤務弁護士、事務職員
  • 契約書チェックや相談対応にAIを使いたいが、非弁行為や守秘義務のリスクが気になって踏み出せない方
  • 少人数事務所で、判例リサーチや事務所だよりの作成に時間が取られている方

読了後にできること

  • 弁護士自身のAI利用と、AI契約審査サービス事業者の適法性の論点を区別して説明できる
  • 依頼者情報を保護しながら、契約書チェックや相談対応の下書きをAIに任せられる
  • 判例・条文のハルシネーション対策として、検証と記録のルールを事務所に導入できる

1. 岩手の弁護士・法律事務所が抱える業務負担の特徴

岩手弁護士会は2024年4月時点で会員111名。全国52の弁護士会の中でも規模が小さく、会員の約3分の2が県庁所在地の盛岡市に集中しています。北海道に次ぐ広い県土をカバーする中で、一関・宮古・久慈など盛岡以外の地域では、少人数または単独開業の事務所が地域の法律相談を一手に引き受けているケースが目立ちます。

相談内容も地方特有の傾向があります。農地や空き家が絡む相続案件、事業承継トラブル、地場企業の取引契約チェックなど、都市部の大規模事務所のように業務を分業できない分、契約書レビュー・相談対応・書面作成のすべてを弁護士自身がこなす場面が集中しやすい構造です。AIを「下書き・一次チェック」の補助として使う意味は、都市部の大規模事務所以上に大きいといえます。

2. 弁護士がAIで契約書をチェックするのは非弁行為か(法務省2023年8月ガイドラインの整理)

弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で「訴訟事件その他一般の法律事件」に関して「鑑定その他の法律事務」を取り扱うことを禁じる条文です。この条文が想定しているのは非弁護士(法人)による法律事務の取り扱いであり、資格を持つ弁護士本人が、自分が受任した事件でAIを契約書チェックの補助ツールとして使うこと自体は、そもそも規制の対象外です。

一方で、2023年8月1日に法務省が公表した「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」は、弁護士本人の利用ではなく、AI契約審査サービスを提供する“事業者”側が72条に違反しないための整理です。同ガイドラインでは、次の3要件のいずれか1つでも満たさなければ違反にならないとされました。

  • 事件性の要件:相手方との権利義務関係に争いや疑義のない、通常の契約締結業務は「事件性」がないとされる
  • 鑑定等の要件:システムに登録済みのチェックリストと契約内容が一致した場合に、個別修正を加えず一般的な条項例や解説を示すだけの機能は「鑑定等」に該当しない
  • 報酬目的の要件:報酬を得る目的で行われていないこと

つまり「弁護士自身のAI利用は非弁行為の論点にすら乗らない」ことと、「AI契約審査サービス事業者の適法性」は別の階層の話です。この違いを押さえておくと、事務所内でAIツールを導入する際に、社内向けの説明や利用ルールづくりがしやすくなります。

3. 日弁連が示す生成AI利用の3つの注意点とプロンプト例

2025年、日弁連のワーキンググループが「生成AI利活用に関する注意事項」を公表しました。日弁連としての公式見解ではないと明記されていますが、現時点で最も詳細な実務指針として参照価値が高いものです。要点は次の3つです。

  • 守秘義務:依頼者を特定できる情報(氏名・住所・事案の固有の事実関係など)を、学習に利用される可能性がある外部の生成AIにそのまま入力すると、守秘義務違反につながるおそれがある。入力データが学習に使われない設定・契約のサービスを選ぶか、情報を抽象化してから入力する
  • ハルシネーション対策:生成AIは存在しない裁判例や条文をもっともらしく出力することがある。他国では実際に、弁護士が架空の判例を書面に引用してしまった事例が報告されている。判例・条文は必ず一次情報(裁判所ウェブサイトや判例データベース)で確認し、誰がいつ何を確認したかを記録に残す
  • 最終責任:誤りが生じても「AIがそう言ったので」は免責事由にならない。書面に署名・記名する弁護士本人が最終責任を負う前提で、AIの出力はそのまま使わず、自分の判断を経由させる

契約書チェックの下書きにAIを使う場合は、依頼者を特定できる情報を抽象化したうえで指示するのが基本です。

【プロンプト例:契約書の一次チェック下書き】
以下の契約書条項について、一般的な観点からのチェックポイントを整理してください。
・契約類型:【業務委託契約/秘密保持契約など、具体的な当事者名や固有名詞は書かない】
・確認したい観点:支払条件、契約解除条件、損害賠償の上限、秘密保持義務の範囲
・出力形式:条項ごとに「一般的な留意点」と「追加確認が必要な箇所」を分けて箇条書き
・注意:これは下書きであり、最終判断は弁護士本人が行うことを前提とした整理にすること

AIに最終的な合否判断をさせず、「論点の洗い出し」と「一般的なチェック項目の整理」までに役割を限定するのが安全な使い方です。

4. 相談予約・一次対応をAIの下書きで整える

少人数事務所では、相談予約の電話・メール対応に時間を取られがちです。相談内容のヒアリング項目を先にフォーム化し、AIに一次返信文の下書きを作らせると、対応時間を圧縮できます。

【プロンプト例:法律相談の予約一次返信】
法律事務所への法律相談予約に対する一次返信メールを作成してください。条件:
・相談分野は【相続/契約トラブル/事業承継など】を想定
・確認したい項目:相談内容の概要、関係者との交渉状況の有無、希望する相談方法(来所/オンライン)、希望日時の候補
・トーンは丁寧だが事務的すぎない。個別の法的見解はこの段階では示さず、面談で詳しく伺う旨を明記
・250字以内

この段階のAI下書きは、あくまで日程調整・ヒアリング項目の整理までに留め、具体的な法的アドバイスをAIに書かせないことが重要です。相談内容の実質的な回答は、必ず弁護士本人が面談・電話で行います。

5. 判例・法令のリサーチでAIを使うときの検証ルール

判例や条文の要旨をAIに調べさせること自体は効率化に役立ちますが、日弁連が指摘する通り、生成AIは存在しない判例や条文をもっともらしく作り出すことがあります。実務では、AIの出力を「リサーチの出発点」として扱い、必ず一次情報で裏取りする運用が必要です。

【プロンプト例:判例リサーチの整理依頼】
【論点】に関連しそうな判例の傾向や、確認すべき法律・条文の候補を整理してください。
・出力には、判例名や条文番号を含めてよいが、「必ず裁判所ウェブサイトまたは判例データベースの一次情報で確認すること」という注記を付けること
・確度の低い情報には、その旨を明記すること

あわせて、AIが提示した判例・条文をいつ・誰が一次情報で確認したかを記録するチェック欄を、事務所内の書式に追加しておくと、確認漏れを防げます。

6. 事務所だより・法律コラムのSNS・HP発信をAIで整える

地域の中小企業や個人から見て、法律事務所は「何を相談していいか分からない」と敬遠されがちです。相続、事業承継、農地・空き家の権利関係など、岩手で相談が多いテーマについて、事務所だよりやHPのコラムで平易に発信しておくと、相談のハードルを下げられます。

【プロンプト例:事務所だよりのコラム下書き】
法律事務所の事務所だよりに掲載する、一般向けコラムの下書きを作成してください。テーマ:【相続登記の義務化と農地・空き家の注意点など】
・読者は法律の専門知識がない岩手県内の個人・中小企業経営者
・専門用語を避け、具体的な相談窓口(初回相談の流れなど)への案内で締める
・800字程度

事業承継・相続がらみの発信は、岩手の事業承継・後継者問題をAIで支える完全ガイドで扱っているナレッジ継承の考え方ともつながる部分が多いので、あわせて参考にしてください。

やりがちな失敗パターン

  • AIの出力をそのまま最終書面として提出する:AIの下書きは「論点整理」までの位置づけにとどめ、最終的な文面は必ず弁護士本人が確認・修正してから使います。
  • 依頼者を特定できる情報をそのまま外部AIに入力する:氏名・住所・具体的な事案の固有情報は抽象化し、学習に利用されない設定のサービスを選ぶか、情報を伏せた形で入力します。
  • AIが出した判例・条文を一次情報で確認しない:生成AIは存在しない裁判例をもっともらしく出力することがあります。必ず裁判所ウェブサイトや判例データベースで裏取りし、確認記録を残します。
  • 「AIがそう言ったので」を言い訳にする:誤りが生じた場合の最終責任は、書面に署名・記名する弁護士本人にあります。AIの出力は参考情報として扱い、自分の判断を必ず経由させます。
  • 事務所全体のルールを決めず、個人の注意力任せにする:どの業務にAIを使ってよいか、入力してよい情報の範囲、確認の記録方法を事務所単位で決めておかないと、運用が属人化して事故が起きやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q. 弁護士がAIで契約書チェックをするのは非弁行為ですか?

非弁行為には当たりません。弁護士法72条が規制するのは、非弁護士(法人)が報酬目的で法律事務を扱うことです。資格を持つ弁護士本人が、自分が受任した事件でAIを契約書チェックの補助ツールとして使う行為は、そもそもこの条文の規制対象ではありません。2023年8月の法務省ガイドラインは、AI契約審査サービスを提供する事業者側の適法性を整理したもので、論点が別であることに注意してください。

Q. AIは弁護士の仕事を代替できますか?

現時点では代替できません。日弁連の注意事項が指摘する通り、生成AIは存在しない判例や条文をもっともらしく出力することがあり、最終的な法的判断・責任は弁護士本人が負う必要があります。AIが担えるのは、契約書チェックや判例リサーチの下書き・論点整理までであり、依頼者との信頼関係の構築や最終的な法的助言は弁護士でなければできません。

Q. AI契約書レビューサービスは弁護士法72条に違反しませんか?

2023年8月1日に法務省が公表したガイドラインでは、「事件性の要件」「鑑定等の要件」「報酬目的の要件」の3つのうち、いずれか1つでも満たさなければ72条に違反しないと整理されました。例えば、争いのない通常の契約締結業務であれば事件性の要件を満たさず、チェックリストとの一致による一般的な条項例の提示にとどまる機能であれば鑑定等の要件も満たしません。個別のサービスが要件を満たすかどうかは、機能の内容によって判断が分かれるため、導入時にはサービス提供者の説明を確認してください。

Q. 弁護士がAIを使う際、依頼者の情報をそのまま入力してもいいですか?

避けるべきです。日弁連の注意事項でも、依頼者を特定できる情報を外部の生成AIに入力すると守秘義務違反につながるおそれがあると指摘されています。氏名・住所・事案の固有の事実関係は抽象化したうえで入力するか、入力データが学習に利用されない設定・契約になっているサービスを選んで運用してください。

Q. AIが出した判例や条文は、そのまま信用していいですか?

信用せず、必ず一次情報で確認してください。生成AIは、存在しない裁判例や条文をもっともらしく作り出すことがあります。他国では実際に、弁護士が架空の判例を書面に引用してしまった事例が報告されています。AIの出力は「リサーチの出発点」として扱い、裁判所ウェブサイトや判例データベースで裏取りしたうえで、誰がいつ確認したかを記録に残す運用にしてください。

岩手でAI導入・AI研修を進めたい方へ

契約書チェックの下書きや相談予約対応の効率化は、この記事の範囲で今日から始められます。一方で、事務所全体でAIの利用ルールを統一したい、守秘義務を守れる運用体制を整えたいという場合は、Uravationへご相談ください。岩手県内の事業者支援の経験をもとに、事務所の規模に合わせた進め方をご提案します。事務所でAIを使い始める際は、依頼者情報を入力しないなどの最低限のルールを先に決めておくと安全です。ルールづくりはAI研修前に決める利用ルール完全ガイドにひな形があります。