結論:2026年12月の年末調整から、所得税の基礎控除が合計所得金額に応じて最大104万円に、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられます。給与収入だけの人がこの2つを合わせると、所得税がかからなくなる年収の上限は178万円になります(104万円+74万円)。いわゆる「103万円の壁」は実質的に178万円まで広がった形です。あわせて、学生アルバイトなどの「特定親族」やパート配偶者の年収要件も引き上げられています(国税庁「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」令和8年5月付・「源泉所得税の改正のあらまし」令和8年4月付より)。
この改正は令和8年(2026年)12月1日に施行され、2026年11月までの給与計算には変更がありません。実務への影響がまとめて出るのは2026年12月の年末調整です。岩手県内には小売・飲食・観光・宿泊業を中心に学生アルバイトやパート従業員を多く抱える事業者が多く、扶養控除等申告書の年収要件を勘違いしたまま年末調整を進めると、従業員からの問い合わせ対応や再計算に追われることになります。この記事では、国税庁が公表した一次資料をもとに改正内容を整理し、岩手の中小企業が年末調整までに準備すべきことと、AIをどう使えば準備の負担を減らせるかをまとめます。最終確認日:2026年8月26日。
この記事の要点
- 所得税の基礎控除が、合計所得金額132万円以下の場合で最大104万円に引き上げ(令和8・9年分。改正前は95万円)
- 給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げ(令和8・9年分、収入190万円以下の場合)
- 基礎控除104万円+給与所得控除74万円=178万円が、給与収入のみの人が所得税ゼロになる年収の目安(いわゆる「103万円の壁」の実質的な引き上げ後の水準)
- 扶養親族・配偶者特別控除の対象配偶者・特定親族(学生アルバイトの子など)・勤労学生の所得要件も、それぞれ見直された
- 施行は令和8年12月1日(基礎控除・扶養親族要件)と令和9年1月1日(源泉徴収税額表)の2段階。実務では2026年12月の年末調整で1年分をまとめて精算する
対象読者
- 岩手県内の中小企業・個人事業主で、経理・総務・年末調整の実務を担当している方
- 学生アルバイトやパート従業員(配偶者・子など)を雇用しており、扶養控除等申告書の記載内容を確認する必要がある事業者
- 従業員から「年収の壁が変わったと聞いたが、うちはどうなるのか」と聞かれる機会が増えている総務担当者
経理・総務まわりの文書づくり全般にAIをどう組み込むかは、別記事「岩手の中小企業がAIで経理・総務・社内文書を軽くする方法」も参考にしてください。
読了後にできること
- 2026年12月の年末調整で自社が確認すべき改正点(基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件)を把握できる
- 「103万円の壁」が178万円になった根拠を、国税庁の一次資料の数字で説明できる
- 従業員向けの周知文書やチェックリストの下書きを、AIを使って今日から作り始められる
1. 何が変わるのか|基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件
令和8年度税制改正では、所得税に関する主に3つの見直しが行われました。(1)基礎控除の引き上げ、(2)給与所得控除の最低保障額の引き上げ、(3)扶養親族等の所得要件の改正です。いずれも令和8年分(2026年分)以後の所得税から適用されます。

| 見直し項目 | 改正前 | 改正後(令和8・9年分) |
|---|---|---|
| 基礎控除(合計所得金額132万円以下の場合) | 95万円 | 104万円 |
| 給与所得控除の最低保障額(収入190万円以下) | 65万円 | 74万円 |
| 扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 | 58万円以下(給与収入123万円以下) | 62万円以下(給与収入136万円以下) |
基礎控除は合計所得金額に応じて段階的に決まる仕組みで、所得が高くなるほど加算額が縮小します。104万円が適用されるのは合計所得金額489万円以下(給与収入のみなら約665万円以下)までで、令和8・9年分の2年間限定の措置です。令和10年分以後は合計所得金額132万円以下で99万円、それ以外は62万円が基本となり、物価の状況をふまえて見直しが検討される仕組みです。合計所得金額2,350万円を超える場合は、今回の改正の対象外です(国税庁「源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月」より)。
2. いつから適用されるのか|2段階の施行スケジュール
今回の改正は、施行日が2つに分かれている点に注意が必要です。
| 改正内容 | 施行日 | 適用対象 |
|---|---|---|
| 基礎控除の引き上げ/給与所得控除の最低保障額の引き上げ/扶養親族等の所得要件の改正 | 令和8年12月1日 | 令和8年分以後の所得税 |
| 源泉徴収税額表の改正 | 令和9年1月1日 | 同日以後に支払う給与・公的年金等 |
国税庁の公表資料によれば、「令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更は生じません」と明記されています。2026年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額および改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年分の税額を計算し、それまで源泉徴収してきた税額との精算を行う仕組みです。毎月の給与から天引きする源泉徴収税額表そのものが変わるのは、令和9年(2027年)1月1日以後に支払う給与からになります。
3. 「103万円の壁」は178万円に|内訳を国税庁データで確認
「103万円の壁」という呼び方は、給与収入のみの人にかかる旧・給与所得控除65万円と旧・基礎控除38万円(所得税法上の原則額)を合わせた103万円が、所得税が発生し始める年収ラインだったことに由来します。今回の改正後は、この2つの控除がそれぞれ引き上げられています。

- 給与所得控除の最低保障額:74万円(収入190万円以下の場合)
- 基礎控除:104万円(合計所得金額132万円以下の場合)
- 合計:178万円 = 給与収入だけの人が所得税ゼロになる年収の目安
この178万円という数字は、国税庁が公表した基礎控除額表と給与所得控除額表をもとに編集部で計算したものです(国税庁の資料内に「178万円」という表現がそのまま記載されているわけではありません)。年収178万円のとき、給与所得控除74万円を差し引いた所得は104万円となり、合計所得金額132万円以下の区分に該当するため基礎控除も104万円が適用され、課税所得がちょうどゼロになる、という計算です。正確な金額の確認は、国税庁の公表資料または顧問税理士に依頼することをおすすめします。
4. 扶養親族・配偶者・学生アルバイトの年収要件はどう変わったか
扶養控除や配偶者特別控除、特定親族特別控除(学生アルバイトの子などが対象)の判定に使う所得要件も、基礎控除・給与所得控除の見直しにあわせて改正されています。
| 区分 | 改正前(給与収入換算) | 改正後(給与収入換算) |
|---|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の生計を一にする子 | 58万円以下(123万円以下) | 62万円以下(136万円以下) |
| 特定親族(19歳以上23歳未満の子など) | 58万円超123万円以下(123万円超188万円以下) | 62万円超123万円以下(136万円超197万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 58万円超133万円以下(123万円超201万5,999円以下) | 62万円超133万円以下(136万円超207万円以下) |
| 勤労学生 | 85万円以下(150万円以下) | 89万円以下(163万円以下) |
特定親族特別控除は、大学生年代の子などがアルバイトで一定額まで稼いでも親の控除が段階的に受けられる仕組みです。控除額は年収に応じて63万円から3万円まで段階的に減っていくため、「年収いくらまでなら控除ゼロにならないか」を一律の数字で説明するのは避け、実際の給与収入額に応じて確認する必要があります。
5. 岩手の中小企業が年末調整(2026年12月)までに準備する3つのこと

- 扶養控除等申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書の様式を確認する。国税庁の資料では、令和8年分の申告書自体に記載事項の変更はないものの、様式裏面の注意事項が改正前の内容のままになっている場合があると案内されています。新しい様式を使う場合は、給与計算ソフトの提供元(freee、マネーフォワード等)から令和8年分対応版が案内されているか確認してください。
- 新たに扶養控除等の対象になる家族がいないか、従業員に確認を依頼する。所得要件が引き上げられたことで、これまで扶養の範囲外だった学生アルバイトの子やパートの配偶者が、新たに対象になるケースがあります。該当する場合は、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載したうえで、給与の支払者に提出してもらう必要があります。
- 従業員への周知タイミングを、11月の申告書配布に合わせて決める。年末調整関係書類は例年11月から提出を受け付けている事業者が多いですが、国税庁の資料では「令和8年12月1日からの改正を反映した書類を、同日前から提出することとしても差し支えない」とされています。早めに周知し、記載ミスによる再提出を減らすことが実務上のポイントです。
6. AIで年末調整の準備を軽くする4つの使い道

制度の解釈や最終的な税額計算はAIに任せず、必ず国税庁の資料や顧問税理士で確認してください。AIが向いているのは、決まった内容を「わかりやすい文章に整える」作業です。
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従業員向け周知文書のドラフト作成
プロンプト例:「岩手県内の小売店で働くパート従業員向けに、2026年12月の年末調整から扶養控除等申告書の年収要件が変わることを伝えるお知らせ文を、丁寧だが簡潔な文体で300字程度で書いてください。専門用語は最小限にし、詳しい制度内容は国税庁ウェブサイトで確認するよう案内文に含めてください。具体的な金額はまだ入れず、後で差し替えられるように[ ]で空欄にしてください。」 -
扶養控除等申告書のチェックリスト作成
プロンプト例:「総務担当者が年末調整で扶養控除等申告書を確認する際のチェックリストを、箇条書きで10項目以内で作ってください。新たに扶養控除の対象になりそうな家族(学生アルバイトなど)を見落とさない項目を含めてください。」 -
想定問答(Q&A)のドラフト
プロンプト例:「従業員から『年末調整で何が変わるのか』と聞かれたときに使える、Q&A形式の説明資料を5問分、口頭で説明しやすい平易な言葉で作成してください。金額の部分は空欄にしておき、後で自社の実際の数字に置き換えられるようにしてください。」 -
社内説明会・配布資料の構成下書き
プロンプト例:「従業員10〜20名規模の会社向けに、年末調整の変更点を5分で説明するための簡単な資料構成案(見出しと箇条書き)を作ってください。専門用語は使わず、『今までと何が違うか』が伝わる構成にしてください。」
AIが作った文章は、必ず担当者が国税庁の一次資料と突き合わせてから配布してください。従業員の家族構成や収入といった個人情報を、外部のAIサービスにそのまま入力しないことも重要です。入力してよい情報と確認者を事前に決めておく進め方は「AI研修前に決める利用ルール完全ガイド」にひな形があります。年末に向けた他の支払い・納税イベントとあわせて段取りを組みたい場合は「岩手の中小企業がAIで作る年末までの支払いカレンダー」もあわせて確認してください。
7. よくある間違い・注意点

- 旧様式の申告書をそのまま使い続けてしまう。新たに扶養控除等の対象となる家族がいる従業員は、その旨を記載した申告書を改めて提出する必要があります。「去年と同じでいい」と思い込んで確認を省略すると、申告漏れにつながります。
- 「壁が178万円になった」=「誰でも178万円まで無税」と誤解してしまう。基礎控除の金額は合計所得金額に応じて変わり、給与所得控除も収入額によって計算式が変わります。178万円はあくまで一つの目安であり、全員一律に当てはまる数字ではありません。
- 12月の年末調整だけで完結すると思い込み、令和9年1月からの毎月の源泉徴収税額表の改正を見落とす。2026年12月の年末調整で1年分は精算されますが、2027年1月以降に支払う給与からは、新しい源泉徴収税額表を使う必要があります。給与計算ソフトが対応版に更新されているか、年明け前に確認してください。
8. 住民税・社会保険はどう扱われるか
今回の基礎控除・給与所得控除の引き上げは、所得税(国税)の改正です。住民税(岩手県民税・市町村民税)側で基礎控除や非課税限度額をどう扱うかについては、2026年8月時点でiwateai編集部は岩手県内の各市町村による具体的な公式発表を確認できていません。税目によって適用時期や基準が異なる可能性があるため、断定はせず、お住まい・事業所所在地の市町村税務担当課、または顧問税理士に確認してください。
また、社会保険(厚生年金・健康保険)の被扶養者認定に使われる「130万円の壁」「106万円の壁」は、今回の所得税の改正とは別の制度・別の基準で運用されており、この記事で扱った改正によって変更されたものではありません。社会保険側の扶養の壁については、別記事「岩手の社会保険適用拡大×AI|106万円の壁撤廃対応ガイド」で解説しています。従業員への説明では、税金の壁と社会保険の壁を混同しないよう注意してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 「103万円の壁」は結局いくらになったのですか?
国税庁が公表した令和8年度税制改正の資料によると、給与収入だけの人にかかる基礎控除(合計所得金額132万円以下で最大104万円)と、給与所得控除の最低保障額(65万円から74万円に引き上げ)を合わせると、所得税がかからなくなる年収の上限は178万円になります(104万円+74万円、編集部による計算)。いわゆる「103万円の壁」は、実質的に178万円まで引き上げられた形です。
Q. 改正はいつから適用されますか?
基礎控除の引き上げ、給与所得控除の最低保障額の引き上げ、扶養親族等の所得要件の改正は、令和8年(2026年)12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。一方、毎月の給与から差し引く源泉徴収税額表の改正は令和9年(2027年)1月1日施行です。2026年11月までの給与計算に変更はなく、2026年12月の年末調整でまとめて1年分を精算します(国税庁公表資料より)。
Q. 扶養に入っているアルバイトの学生は、年収いくらまで働けますか?
19歳以上23歳未満の子などが対象になる「特定親族」の所得要件は、令和8年度税制改正で合計所得62万円超123万円以下(給与収入に換算すると136万円超197万円以下)に改正されました(改正前は58万円超123万円以下、給与収入123万円超188万円以下)。ただし特定親族特別控除の控除額は年収に応じて段階的に減っていく仕組みのため、正確な金額は国税庁の資料または顧問税理士に確認することをおすすめします。
Q. 住民税にもこの改正はそのまま適用されますか?
今回の基礎控除・給与所得控除の引き上げは所得税(国税)の改正です。住民税(岩手県民税・市町村民税)側の基礎控除・非課税限度額の扱いについては、2026年8月時点でiwateai編集部は岩手県内自治体の具体的な公式発表を確認できていません。税金の種類によって基準や適用時期が異なる可能性があるため、断定せず、各市町村の税務担当課または顧問税理士に確認してください。
Q. 個人事業主やフリーランスにも関係ありますか?
基礎控除は所得の種類を問わず、合計所得金額に応じて適用されます。したがって、給与所得者だけでなく個人事業主やフリーランスの所得税にも基礎控除の引き上げは関係します。一方、給与所得控除の最低保障額の引き上げ(65万円から74万円)は給与収入がある人だけが対象で、事業所得には適用されません。自分がどちらに該当するかを確認したうえで、必要な書類を準備してください。
岩手でAI導入・AI研修を進めたい方へ
周知文書の下書きやチェックリスト作成は、この記事の範囲で今日から進められます。一方で、自社の従業員が実際にどの区分に該当するか、控除額がいくらになるかという個別の判定は、顧問税理士または国税庁への確認が欠かせません。社内でのAI活用ルールづくりを含めて相談したい場合は、Uravationへご相談ください。岩手県内の中小事業者支援の経験をもとに、経理・総務の実務に合わせた進め方をご提案します。
出典
- 国税庁「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月付)https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/pdf/0026005-024.pdf
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/index.htm
- 国税庁「源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf