Search

IWATE AI JOURNAL

記事を読む 岩手のAI活用・補助金・研修設計を実務で使う
業務改善

生成AI活用、中小企業は32.3%どまり|岩手の企業が今すぐやること

生成AI活用、中小企業は32.3%どまり|岩手の企業が今すぐやること

東京商工リサーチが2026年3月31日〜4月7日に実施した調査(有効回答6,327社)では、生成AIを「会社として活用を推進」している中小企業は19.1%、部門単位の推進も合わせて32.3%にとどまり、大企業の59.1%とは26.8ポイントの差がある。別の全国調査(中小企業基盤整備機構、2026年3月公表)でもAI導入率は20.4%で、導入を検討中の企業を合わせても39.0%と、全体の6割はまだ動いていない。岩手県単体の活用率は本稿執筆時点(2026年8月24日)で公式には確認できていないが、これらの全国データは岩手の中小企業が自社の立ち位置を測るベンチマークとして使える。この記事では、なぜ中小企業でAI活用が伸び悩むのかという構造要因と、岩手の中小企業が何から着手すべきかを、公的統計に基づいて整理する。

この記事の要点

  • 大企業のAI組織活用率59.1%に対し、中小企業は32.3%(東京商工リサーチ2026年4月調査)と27ポイント近い差がある
  • 中小企業のAI導入率は20.4%、検討中を含めても39.0%(中小機構2026年3月公表調査)にとどまる
  • 最大のボトルネックは「情報不足」で、成功事例・活用事例の情報が足りないと答えた企業は83.3%にのぼる
  • 業務部門別では総務・管理部門の導入率が68.3%と最も高く、着手する部門の優先順位がデータで示されている
  • 岩手県単体の統計は現時点で確認できないため、本稿は全国データを踏まえた実務ガイドとして構成している

対象読者

  • 岩手県内で従業員数十名規模までの中小企業を経営する経営者・総務担当者
  • 社内でAI活用を検討しているが、何から始めればよいか判断材料が欲しい担当者
  • 商工会議所・商工会・自治体でAI活用の相談対応をしている支援機関の担当者

読了後にできること

  • 全国の中小企業と自社のAI活用状況を比較し、自社の立ち位置を把握できる
  • データに基づいて「どの部門から着手すべきか」の優先順位を判断できる
  • 90日単位のロードマップで、部門導入から全社展開までの流れを設計できる

2026年8月時点のスナップショット:全国の中小企業AI活用率はどこまで進んだか

まず現在地を公的統計で確認する。東京商工リサーチが2026年3月31日〜4月7日に実施した調査(有効回答6,327社)によると、生成AIの活用状況は企業規模で大きく分かれる。

区分 会社として活用を推進 部門によっては活用を推進 組織的活用の合計
大企業(455社) 36.4%(166社) 22.6% 59.1%
中小企業 19.1% 13.2% 32.3%
全体(6,327社) 20.3%(1,289社)

全体では「方針は決めていない」と回答した企業が37.5%(2,374社)で、前回調査(2025年8月実施)の50.9%から13.4ポイント低下した。「会社として活用を推進」も前回13.8%から今回20.3%へ6.5ポイント上昇しており、この半年〜1年で企業のスタンスは前向きに動いている。ただし大企業と中小企業の差そのものは埋まっておらず、中小企業の3社に2社は依然として組織的な活用に至っていない。

大企業59.1%と中小企業32.3%の生成AI組織活用率を比較した棒グラフ

もう一つ、中小企業に絞った別の全国調査もある。中小企業基盤整備機構(中小機構)が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(調査期間: 令和7年11月17日〜12月12日、全国の中小企業10,000社に配布・有効回答1,668社、業務委託先: 東京商工リサーチ)では、AIの導入率(全社的導入+一部業務での導入)は20.4%、導入を検討中の企業(18.6%)を合わせると39.0%が前向きという結果だった。裏を返せば、残り6割の中小企業はまだAI導入を具体的に検討していない段階にある。なお、この2つの調査はいずれも全国集計であり、岩手県単体の内訳は本稿執筆時点で両調査の公表資料からは確認できていない。岩手県内企業を対象にした調査結果が別途報じられる場合もあるが、本稿では一次資料で数値を確認できたものだけを掲載している。

なぜ中小企業でAI活用が伸び悩むのか ――情報不足という最大のボトルネック

中小機構の調査では、AI・IT導入にかかる社内理解や情報量について、複数の項目で「不足している」という回答が突出して多かった。

  • 「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」に当てはまらないと回答した企業: 83.3%
  • 「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらないと回答した企業: 79.8%
  • 「社内においてIT・AIの必要性への理解がある」に当てはまると回答した企業: 45.1%

つまり中小企業の多くは「AIを使いたくない」のではなく、「何をどう選べばいいか判断材料がない」状態で止まっている。同調査で「導入を推進するために必要な公的支援」を尋ねた結果でも、「導入費用などの助成」(77.9%)に次いで「導入事例などの情報提供」(70.5%)、「従業員向けの教育・研修」(67.7%)が高く支持されており、資金面の支援と同じくらい情報面の支援が求められている実態が読み取れる。

岩手県のように首都圏に比べてITベンダーの選択肢や同業他社の事例が可視化されにくい地域では、この「情報不足」のボトルネックがより強く効いている可能性が高い。実際、東京商工リサーチの調査でも大企業と中小企業の差の主因は技術力そのものよりも、社内の推進体制・情報収集力・投資判断のスピードにあると指摘されている。逆に言えば、情報不足さえ解消できれば、中小企業でも大企業に匹敵するスピードでAI活用を進められる余地があるということでもある。

岩手の中小企業がまず着手すべき3ステップ

中小機構の調査では、業務部門別のAI導入率にも明確な差があった。総務・管理部門(68.3%)が最も高く、営業・販売・サービス部門(60.3%)、経営・企画部門(58.5%)、製造・生産部門(34.9%)と続く。これは「どの部門から着手するのが合理的か」を考える上で参考になる序列である。この序列を踏まえ、岩手の中小企業が着手する順番を3ステップで整理する。

  1. 総務・管理部門の定型業務から着手する: 議事録作成、社内文書のたたき台作成、問い合わせ対応のテンプレート化など、個人情報や機密情報を含みにくい業務から生成AIを試す。導入済み企業のAI活用内訳でも「生成AI」(82.6%)が突出して多く、最も再現性の高い着手点になっている。
  2. 効果を「時間」で可視化する: AIの導入目的として最も多いのは「業務効率化・作業時間の短縮」(87.0%)であり、導入効果としても同項目が83.2%で最も評価されている。最初の取り組みでは「何にどれだけ時間がかかっていたか」を導入前に記録し、導入後との差分を社内に示すことが、次の投資判断や社内説得の材料になる。
  3. 事例と研修で情報不足を埋める: 前章で見た通り、情報不足が最大のボトルネックである以上、自社だけで手探りするより、岩手県内で実施されている生成AI研修や商工会議所・商工会のセミナーに参加し、他社の活用事例に触れる方が遠回りに見えて近道になりやすい。
岩手の中小企業がAI活用に着手する3ステップを示した図

部門から全社へ広げる90日ロードマップ

3ステップを踏まえ、部門単位の試行から全社展開までを90日単位のロードマップに落とし込むと以下のようになる。あくまで一般的な進め方の目安であり、実際の期間は企業規模や業種によって前後する。

フェーズ 期間の目安 主な内容
フェーズ1: 試行 0〜30日目 総務・管理部門で対象業務を1〜2つに絞り、生成AIツールを試用。入力してよい情報・入力してはいけない情報のルールを最初に決める
フェーズ2: 検証・拡大 31〜60日目 作業時間の削減効果を数値で記録し、社内に共有。効果が確認できた業務を営業・企画部門など隣接部門へ横展開する
フェーズ3: 定着・全社ルール整備 61〜90日目 利用ガイドライン・情報セキュリティ上の運用ルールを整備し、製造・生産部門など判断が必要な領域への展開可否を検討する
AI活用を部門導入から全社展開へ広げる90日ロードマップ図

陥りやすい失敗パターンと回避策

  • 効果を可視化せずに導入だけして終わる: 「なんとなく便利そう」で導入すると、社内の投資判断材料が残らず、次の展開に進めない。フェーズ1の段階で「導入前の所要時間」を必ず記録しておく。
  • 現場の合意形成なしにトップダウンで進める: 「監視される」「仕事を奪われる」という受け止め方をされると定着しない。誰の作業負担を減らすためのAIかを最初に明確に伝える。
  • 入力ルールを決めずに機密情報や個人情報を入力してしまう: 顧客情報や取引先情報を無条件にAIへ入力すると情報漏えいリスクが高まる。フェーズ1の着手時点で「入力してよい情報」と「入力してはいけない情報」の線引きを文書化しておく。
AI導入でよくある失敗3パターンとその回避策を示した図

補助金・研修という選択肢

中小機構の調査で「導入を推進するために必要な公的支援」の上位に挙がったのは、導入費用の助成(77.9%)、導入事例などの情報提供(70.5%)、従業員向けの教育・研修(67.7%)だった。岩手県内でも、生成AI関連の研修・セミナーや各種補助金の情報は複数の制度が存在する。人材開発支援助成金など雇用保険適用事業所向けの研修助成は、要件審査を経て対象となる場合がある制度であり、支給を保証するものではない点に留意が必要だ。自社が対象になるかどうかは、岩手県内で実施されている生成AI研修の情報や、各種補助金の要件を個別に確認することをおすすめする。

AI導入を推進するために必要な公的支援ニーズのチェックリスト図

FAQ

Q1. 岩手県の中小企業の生成AI活用率は何%ですか? 岩手県単体の活用率は、本稿執筆時点(2026年8月24日)で東京商工リサーチ・中小機構いずれの公表資料からも確認できていない。全国の中小企業では、生成AIを組織的に活用している企業は32.3%(東京商工リサーチ2026年4月調査)、AI導入率は20.4%(中小機構2026年3月公表調査)である。岩手県内企業を対象にした個別調査が今後公表された場合は、本稿を更新する。

Q2. 中小企業のAI導入率はどのくらいですか? 中小機構が2026年3月に公表した調査(全国の中小企業10,000社に配布、有効回答1,668社)では、AIの導入率(全社的導入+一部業務での導入)は20.4%、導入を検討中の企業(18.6%)を合わせると39.0%が前向きという結果だった。

Q3. なぜ中小企業でAI活用が進まないのですか? 最大の要因は情報不足である。中小機構の調査では「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」に当てはまらないと回答した企業が83.3%、「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらないと回答した企業が79.8%にのぼった。資金面より先に、判断材料となる情報が不足している企業が多い。

Q4. AI導入はどの部門から始めるべきですか? 中小機構の調査では、業務部門別のAI導入率は総務・管理部門(68.3%)が最も高く、営業・販売・サービス部門(60.3%)、経営・企画部門(58.5%)、製造・生産部門(34.9%)の順だった。個人情報や機密情報を含みにくい総務・管理部門の定型業務から着手するのが、データ上も現実的な進め方といえる。

Q5. AI導入の効果はどう測ればいいですか? 中小機構の調査では、AI導入効果として「業務効率化・作業時間の短縮」(83.2%)が突出して評価されている。導入前に対象業務の所要時間を記録し、導入後との差分を数値で示すのが最もシンプルで社内説得力のある測定方法である。

Q6. 岩手県内で使える研修や補助金はありますか? 岩手県内では生成AI関連の研修・セミナーが複数実施されているほか、要件を満たす場合に対象となる補助金・助成金制度も存在する。人材開発支援助成金など雇用保険適用事業所向けの制度は、要件審査があり支給を保証するものではない点に注意し、詳細は個別の制度案内や専門家に確認することを推奨する。