岩手県商工労働観光部が2026年9月15日に「令和7年岩手県観光統計概要」を公表しました。令和7年(2025年)の県全体の入込客数(実人数)は16,160千人・回で、前年比747千人・回、4.4%の減少。一方、県全体の観光消費額は221,940百万円で、前年比22,667百万円、11.4%の増加です。来た人は減ったのに、使われたお金は増えた。この2つの数字がどうして同時に成り立つのかが、今年の資料を読むいちばんの入口になります。
もう1つ、資料の前提を先に押さえておきます。観光入込客数の「実人数」は、1人の観光客が1回の旅行で複数の観光地を訪問しても「1」と数える推計値です。観光地ごとに数える「延べ人数」とは別物で、令和7年の延べ人数は25,779,577人回(前年比659,889人回、2.5%減)でした。SNSやニュースで「岩手の観光客が減った」という見出しを見たとき、どちらの数字の話なのかを確かめないと、自分の店の来客数と比べる意味がなくなります。
この記事では、県が公表した令和7年版の資料をもとに、入込客数と観光消費額がずれた理由、四半期と4エリアの動き、市町村別で伸びたところ、外国人観光客の国・地域別の内訳、アンケートから見える観光客の行動と旅行費用を整理します。そのうえで、県内の宿・飲食・土産・観光施設がこの統計を自分の商売に当てはめる手順と、生成AIに任せてよい作業の線引きをまとめます。
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この記事の要点
- 令和7年の入込客数(実人数)は16,160千人・回で4.4%減、観光消費額は221,940百万円で11.4%増、延べ人数は25,779,577人回で2.5%減です。
- 減ったのは県内客の日帰り(7,663千人・回から6,728千人・回、令和6年比87.8%)で、県外客の日帰りは4,341千人・回から4,950千人・回(114.0%)に増えました。
- 消費額を押し上げたのは県外客・宿泊の観光消費額112,555百万円(115.5%)と、ビジネス目的の観光消費額91,257百万円(135.2%)です。
- 四半期別では7-9月期だけが増加(8,758,236人回、103.8%)で、10-12月期は5,410,703人回(91.4%)と最も落ち込みました。
- 4エリアのうち前年より増えたのは県北エリアだけ(3,255,466人回、101.5%)で、市町村別では野田村139.6%、住田町131.4%、田野畑村116.4%が大きく伸びています。
- 外国人観光客の入込客数は561,354人回で18.5%増。台湾が321,234人回(構成比57.2%)で6割近くを占め、中国は36,621人回で54.0%増でした。
- アンケートでは、旅行先に岩手を選んだ理由の1位が「美味しいものを食べるため」38.9%、総合満足度の『満足』は92.2%。優先改善項目は「買い物をする」でした。
- 統計の数字を写すのは人、地域や業種ごとの説明文に直すのが生成AI、という分担なら、間違いを増やさずに作業を軽くできます。
令和7年版岩手県観光統計概要とは何か

岩手県の観光統計は、観光庁が定めた「観光入込客統計に関する共通基準」に基づく統計と、県が独自に実施している統計(教育旅行客、外国人観光客、スキー客の入込動向)の2本立てです。9月15日に公表された「令和7年版 岩手県観光統計概要」(PDF)は前者を説明する資料で、調査対象期間は令和7年1月1日から令和7年12月31日までの暦年です。
共通基準統計は3つの調査を組み合わせて推計する
共通基準に基づく観光入込客統計は、次の3つの調査から都道府県ごとの観光入込客数、観光消費額単価、観光消費額を推計します。
- 観光地点等入込客数調査(全数調査)。県内の観光地点と行祭事・イベントを訪れた人数を、観光地点の管理者や行祭事・イベントの実施者に四半期ごとに報告してもらう調査です。
- 観光地点パラメータ調査(サンプル調査)。県内の観光地点を訪れた観光客に、訪問地点数や観光消費額単価などを四半期ごとに聞く調査です。
- 他の統計調査。上の2つを補完するために、観光庁の宿泊旅行統計調査や旅行・観光消費動向調査などを使います。
令和7年の調査対象地点は、観光地点266地点と行祭事・イベント97地点の計363地点でした。集計対象になる観光地点は、観光入込客数が年間1万人以上、または特定月の観光入込客数が5千人以上であることが要件です。つまり、この統計に載る数字は「県内のすべての観光客」ではなく、要件を満たす363地点の来訪者を積み上げた推計値だという点は覚えておいてください。
県独自統計は公表時期が別
教育旅行客と外国人観光客の入込動向(令和7年)は令和8年3月27日に、スキー客の入込動向(令和6年12月から令和7年5月)は令和7年5月30日に、それぞれ県ホームページで先に公表されています。9月の概要資料には、これらの結果も冒頭に要約として載っています。
去年の資料と比べるときは、もう1つ注意があります。令和6年版岩手県観光統計概要は令和8年9月15日付で修正されており、令和7年版に載っている令和6年の数値(入込客数(実人数)16,907千人・回、延べ人数26,439,466人回、観光消費額199,273百万円)が最新の比較対象です。去年ダウンロードした資料の数字と今年の資料の「令和6年」欄が食い違っていても、間違いではありません。最新版の数字を使ってください。
入込客は減り、消費額は増えた

県の資料は、観光消費額と観光入込客数の2つをKPI指標として最初に示しています(令和7年版 岩手県観光統計概要 第2部 表1・表2)。令和7年の観光消費額は221,940百万円で令和6年の111.4%、観光入込客数は16,160千人・回で令和6年の95.6%でした。
| 項目 | 令和6年 | 令和7年 | 令和6年比 |
|---|---|---|---|
| 観光入込客数(千人・回) | 16,907 | 16,160 | 95.6% |
| うち日本人観光入込客数 | 16,685 | 15,931 | 95.5% |
| うち外国人観光入込客数 | 222 | 229 | 103.2% |
| 観光消費額(百万円) | 199,273 | 221,940 | 111.4% |
| うち日本人観光消費額 | 184,755 | 202,948 | 109.8% |
| うち外国人観光消費額 | 14,518 | 18,992 | 130.8% |
減ったのは県内客の日帰り
観光目的で来訪した日本人の内訳(表7)を見ると、減った場所がはっきりします。県内客の日帰りは7,663千人・回から6,728千人・回へ(令和6年比87.8%)、県内客の宿泊は645千人・回から612千人・回へ(94.9%)減りました。県内計は8,308千人・回から7,340千人・回(88.3%)です。
一方、県外客の日帰りは4,341千人・回から4,950千人・回(114.0%)に増え、県外計は5,758千人・回から6,256千人・回(108.6%)になりました。県外客の宿泊だけは1,417千人・回から1,306千人・回(92.2%)に減っています。全体で4.4%減った中身は「県内客の日帰りが935千人・回減り、県外客の日帰りが609千人・回増えた」という入れ替わりです(いずれも表7の令和6年と令和7年の差)。
消費額を押し上げたのは県外客の宿泊とビジネス客
日本人の観光目的の観光消費額は総計111,691百万円で、令和6年比95.3%と減っています。県内客の観光消費額が40,223百万円から34,676百万円(86.2%)に減った影響が大きく、県外客は77,025百万円から77,015百万円(100.0%)とほぼ横ばいでした。
それでも県全体の観光消費額が11.4%増えた理由は、観光目的以外にあります。ビジネス目的で来訪した日本人の観光消費額は67,507百万円から91,257百万円(135.2%)に増え、訪日外国人の観光消費額も14,518百万円から18,992百万円(130.8%)に増えました。日本人観光消費額のうち県外客・宿泊は97,432百万円から112,555百万円(115.5%)です。
観光消費額単価は宿泊で上がった
1人回あたりの観光消費額単価(表7)は、県内客の宿泊が20,274円から22,334円(110.2%)、県外客の宿泊が33,325円から33,746円(101.3%)に上がりました。逆に県内客の日帰りは3,542円から3,124円(88.2%)、県外客の日帰りは6,862円から6,653円(97.0%)に下がっています。ビジネス目的の県外客・宿泊の単価は40,148円から61,168円(152.4%)で、伸び幅が最も大きい区分です。
人数が減っても消費額が増える構図は、この単価の動きで説明できます。日帰り客の単価が下がり、宿泊客とビジネス客の単価が上がった。県内の宿にとっては、客数より客単価の側で数字が動いた1年でした。
四半期と4エリアで見る令和7年の動き

延べ人数25,779,577人回を四半期と地域で分けると、伸びた時期と場所がはっきりします(令和7年版 岩手県観光統計概要 第3部 図4・図5)。
四半期別では夏だけが増えた
| 四半期 | 令和6年(人回) | 令和7年(人回) | 令和6年比 |
|---|---|---|---|
| 1-3月期(冬期) | 4,951,401 | 4,890,533 | 98.8% |
| 4-6月期(春期) | 7,128,897 | 6,720,105 | 94.3% |
| 7-9月期(夏期) | 8,437,324 | 8,758,236 | 103.8% |
| 10-12月期(秋期) | 5,921,844 | 5,410,703 | 91.4% |
7-9月期だけが前年を上回り、10-12月期の落ち込みが最も大きくなっています。月別で見ると、令和7年の合計が最も多い月は8月の4,454,420人回、最も少ない月は12月の1,235,729人回でした。8月の数字は盛岡市の1,426,396人回が大きく、行祭事・イベントの集中する月に県全体の延べ人数が跳ね上がる構造です。
4エリアでは県北エリアだけが増えた
| エリア | 令和6年(人回) | 令和7年(人回) | 令和6年比 |
|---|---|---|---|
| 県央エリア | 8,180,779 | 7,897,555 | 96.5% |
| 県南エリア | 10,007,131 | 9,721,995 | 97.2% |
| 沿岸エリア | 5,043,556 | 4,904,561 | 97.2% |
| 県北エリア | 3,208,000 | 3,255,466 | 101.5% |
県の資料も「前年と比較すると、県北エリアのみ入込が増加している」と書いています。県北エリアの内訳を分類別で見ると、行祭事・イベントが190,883人回から240,679人回(126.1%)に増え、温泉・健康も566,275人回から569,730人回(100.6%)と微増でした。
市町村別で伸びたところ、減ったところ
市町村別の延べ人数(表4)で令和6年比が大きいのは、野田村246,997人回(139.6%)、住田町70,628人回(131.4%)、田野畑村78,280人回(116.4%)、岩泉町377,837人回(107.2%)、九戸村44,838人回(107.3%)、矢巾町264,179人回(106.6%)です。いずれも規模の小さい市町村で、1つの施設やイベントの動きが率として大きく出ます。
逆に減り幅が大きかったのは普代村36,811人回(82.5%)、陸前高田市1,140,836人回(88.1%)、滝沢市295,304人回(91.5%)、一戸町334,343人回(92.0%)です。規模の大きい市では、盛岡市3,466,817人回(96.6%)、一関市2,034,549人回(94.8%)、花巻市1,852,419人回(92.9%)が減り、平泉町1,655,503人回(101.7%)、久慈市1,376,042人回(100.3%)、遠野市1,372,165人回(100.9%)が増えました。
分類別で見ると自然と行祭事は増え、歴史・文化は減った

観光地点を7つの分類で分けた延べ人数(表6)は、次のとおりです。
| 分類 | 令和6年(人回) | 令和7年(人回) | 令和6年比 |
|---|---|---|---|
| 自然 | 2,864,538 | 2,950,600 | 103.0% |
| 歴史・文化 | 3,441,560 | 3,182,573 | 92.5% |
| 温泉・健康 | 4,959,415 | 4,848,041 | 97.8% |
| スポーツ・レクリエーション | 2,293,452 | 2,171,109 | 94.7% |
| 都市型観光(買物・食等) | 2,791,146 | 2,731,702 | 97.9% |
| その他 | 5,573,815 | 5,377,423 | 96.5% |
| 行祭事・イベント | 4,515,540 | 4,518,129 | 100.1% |
増えたのは自然と行祭事・イベント
県全体で前年を上回ったのは自然(103.0%)と行祭事・イベント(100.1%)の2分類だけでした。沿岸エリアでは自然が484,541人回から532,990人回(110.0%)、歴史・文化が165,144人回から175,937人回(106.5%)、温泉・健康が344,049人回から364,120人回(105.8%)と、3分類が増えています。県南エリアの自然も1,297,158人回から1,329,038人回(102.5%)に増えました。
減ったのは歴史・文化とスポーツ・レクリエーション
歴史・文化は県央エリアで1,153,856人回から981,779人回(85.1%)と減り幅が最も大きく、県南エリアも1,971,006人回から1,872,188人回(95.0%)に減りました。スポーツ・レクリエーションは県央エリアで1,292,389人回から1,221,260人回(94.5%)、県南エリアで600,997人回から558,538人回(92.9%)です。
温泉・健康は県全体で4,848,041人回と、行祭事・イベントを除けば最も延べ人数の多い分類ですが、令和6年比97.8%と減っています。温泉旅館の集客の考え方は「岩手の温泉旅館・旅館組合がAIで予約対応・多言語接客・SNS発信を効率化する完全ガイド」で整理しています。
外国人観光客は台湾が6割、中国が54.0%増

外国人観光客の数字は、県独自統計の入込客数と、観光庁の宿泊旅行統計調査の延べ宿泊者数の2種類が資料に載っています。単位が「人回」と「人泊」で違うので、混ぜないでください。
県独自統計の入込客数は561,354人回
令和7年の本県への外国人観光客の入込客数は561,354人回で、前年比87,555人回、18.5%増でした(「いわての観光統計」教育旅行客・外国人観光客の入込動向(令和7年))。国・地域別では入込数の多い順に次のとおりです。
| 国・地域 | 入込客数(人回) | 構成比 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 台湾 | 321,234 | 57.2% | 28,162人回・9.6%増 |
| 中国 | 36,621 | 6.5% | 12,844人回・54.0%増 |
| 香港 | 36,413 | 6.5% | 6,220人回・20.6%増 |
| アメリカ | 18,866 | 3.4% | 3,842人回・25.6%増 |
| オーストラリア | 18,035 | 3.2% | 3,359人回・22.9%増 |
台湾だけで構成比57.2%です。伸び率では中国の54.0%増が突出しており、人数では香港とほぼ並びました。共通基準統計のほうの外国人観光入込客数(実人数)は229千人・回(令和6年比103.2%)で、観光目的の宿泊が143千人・回(92.9%)、ビジネス目的の宿泊が79千人・回(116.2%)でした。訪日外国人の観光消費額単価は観光目的の宿泊で33,393円(113.4%)、ビジネス目的の宿泊で179,077円(122.2%)です。
宿泊旅行統計の外国人延べ宿泊者数は429,950人泊
観光庁の宿泊旅行統計調査による岩手県の外国人延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)は、令和7年に429,950人泊で令和6年比117.9%でした(令和7年版 岩手県観光統計概要 第5部 表12)。国籍(出身地)別では台湾219,700人泊(103.4%)、中国35,450人泊(125.8%)、香港32,550人泊(130.0%)、オーストラリア19,230人泊(139.1%)、アメリカ17,090人泊(135.2%)、韓国14,040人泊(120.6%)、タイ10,820人泊(106.3%)です。
岩手県全体の延べ宿泊者数(宿泊目的割合不詳を含む総計)は令和7年に5,551,600人泊で、対前年比94.5%と減少しました。外国人が増え、日本人が減った構図は、ここでも同じです。
2026年の足元は6月の外国人宿泊が16.1%減
令和7年の資料は暦年の確定値ですが、2026年に入ってからの動きは観光庁の月次資料で追えます。観光庁が2026年8月31日に公表した「宿泊旅行統計調査(2026年7月・第1次速報、2026年6月・第2次速報)」によると、2026年6月の岩手県の延べ宿泊者数は422,310人泊(前年同月比4.3%減)、うち日本人が398,990人泊(3.5%減)、外国人が23,320人泊(16.1%減)で、外国人比率は5.5%でした。客室稼働率は53.8%で、前年同月差は0.9ポイントの上昇、都道府県順位は20位です。
ただし観光庁は、令和8年1月分調査から層化基準を「従業者数」から「客室数」に変更したため、前年同月比には見直しの影響が含まれている可能性があると注記しています。2026年の月次の増減率を令和7年の年間値とそのまま並べて「今年は失速した」と結論づけるのは早計です。
アンケートから見える観光客の行動と旅行費用
県は令和7年の1から2月、6月、8月、10月に、盛岡手づくり村、道の駅にしね、小岩井農場、道の駅遠野風の丘、えさし藤原の郷、中尊寺、浄土ヶ浜ビジターセンター、道の駅高田松原、道の駅いわて北三陸、なにゃーと物産センターの10地点で観光地点パラメータ調査を実施し、3,351件の調査票を回収しました(令和7年版 岩手県観光統計概要 第4部)。
岩手を選んだ理由は「美味しいもの」「自然景観」「買い物」
旅行先として岩手県内の観光地を選んだ理由は、「美味しいものを食べるため」が38.9%と最も高く、次いで「自然景観を見るため」35.4%、「買い物をするため」29.7%でした。居住地別では岩手県と青森県の回答者は「買い物をするため」が他の居住地より高く、岩手県居住者では40.7%です。宿泊別では、日帰りは「買い物をするため」が39.7%で宿泊の14.7%より高く、宿泊は「温泉に入るため」が24.7%で日帰りの4.4%より高くなっています。
全体の宿泊率は36.7%、県内での平均宿泊数は1.38泊、平均同行者数は2.80人、県へのリピーター率は72.8%でした。関東からの来訪者は宿泊率93.5%で、県内客の18.4%とは行動がまったく違います。
旅行費用は土産代3,012円、宿泊費15,974円
1人あたりの各費用の平均金額は、交通費2,976円、土産代3,012円、飲食費2,863円、入場料307円、宿泊費15,974円(岩手県内での宿泊者、パックツアー除く、n=971)でした。令和6年は土産代2,563円、宿泊費14,634円だったので、どちらも上がっています。
居住地別では、関東からの来訪者は交通費6,962円、土産代4,932円、飲食費5,788円、宿泊費17,324円で、他の居住地より高くなっています。岩手県居住者は土産代1,118円、飲食費1,161円です。同じ「観光客」でも、関東からの来訪者と県内客では、1人が落とす金額の桁が違います。
総合満足度は92.2%、優先改善項目は「買い物をする」
総合満足度は「とても満足」「満足」「やや満足」を合わせた『満足』が92.2%でした。項目別満足度と総合満足度の相関を見た分析では、「美味しいものを食べる」「自然景観をみる」「名所・旧跡を訪れる」が令和5年から令和7年まで優先維持項目を維持しています。一方、「買い物をする」は令和6年の優先維持項目から令和7年は優先改善項目に変わりました。相関係数0.423に対して満足度6.01と、平均(相関係数0.372、満足度6.04)より満足度が低く、影響が大きい位置にあります。
土産物店や直売所にとっては、ここが今年の資料でいちばん実務に直結する行です。「買い物をするため」に来る人は3割いて、その満足度が総合満足度を左右するのに、平均より低い。口コミ返信や商品説明の見直しの進め方は「岩手の飲食店・宿の口コミ返信×AI活用ガイド2026」と「岩手の道の駅・直売所がAIで秋の出荷を整える方法」で扱っています。
県内の観光事業者がこの統計を自分の商売に当てはめる手順

資料は75ページありますが、事業者が使う数字は限られます。次の5手順で、自社の判断材料に落とし込んでください。
手順を5つに絞る
- 令和7年版岩手県観光統計概要のPDFをダウンロードする。県の観光統計ページから最新版を取り、ファイル名と公表日を控えます。
- 自社の市町村と分類を1つずつ決める。表4(市町村別)と表6(地域別・分類別)から、自社が属する市町村と「温泉・健康」「都市型観光(買物・食等)」などの分類の令和6年比を書き写します。
- 自社の客層を居住地と宿泊別に分ける。表7の「県内・県外」「宿泊・日帰り」の4区分のうち、自社の売上に占める割合が大きい区分を選び、その区分の実人数と単価の令和6年比を並べます。
- 四半期の落ち込みを自社の月別売上と並べる。10-12月期が91.4%、4-6月期が94.3%という県全体の動きと、自社の同じ期間の売上の増減を比べます。
- 自社の売上データで確かめる。統計の増減と自社の増減がずれていれば、その差が自社固有の要因です。統計は背景を知るための材料で、自社の数字の代わりにはなりません。
宿と土産物店で見る欄が違う
宿にとって効く数字は、県外客・宿泊の観光消費額112,555百万円(115.5%)、宿泊の観光消費額単価の上昇、ビジネス目的の県外客・宿泊の単価61,168円(152.4%)の3つです。客数が減っても単価が上がった年なので、料金設定と平日のビジネス客の取り込みを見直す材料になります。
土産物店や直売所にとって効く数字は、「買い物をするため」29.7%、県外客の日帰り4,950千人・回(114.0%)、土産代の平均3,012円、そして優先改善項目が「買い物をする」に変わったことです。県外からの日帰り客が増えている一方で、買い物の満足度が平均を下回っている。来た人にきちんと買ってもらえていない可能性を、自社の客単価と照らして確かめてください。
統計の公表時期を年間の予定に組み込む
観光統計は、3月末に教育旅行客と外国人観光客の入込動向、5月末にスキー客の入込動向、9月に観光統計概要という順番で県ホームページに載ります(岩手県「観光統計」)。観光庁の宿泊旅行統計調査は毎月末に前々月の第2次速報と前月の第1次速報が公表されます(観光庁「宿泊旅行統計調査」)。冬の集客を考える時期には、雪情報と予約対応の準備を「岩手のスキー場がAIで雪情報発信と予約対応を効率化する方法」で先に整えておくと、5月末のスキー客統計と自社の数字を突き合わせやすくなります。
生成AIに任せてよい範囲と任せてはいけない範囲

観光統計は数字の量が多く、生成AIに読ませたくなる資料です。ただし任せ方を間違えると、存在しない数字が社内資料に混ざります。
任せてはいけない作業
- PDFをそのまま読ませて数字を拾わせること。75ページの資料の表は列がずれて読み取られることがあり、令和6年と令和7年の値が入れ替わっても気づけません。数字は人が表から書き写してください。
- 市町村別の内訳を推測させること。表4に載っていない「宿泊者数の市町村別」などを聞くと、もっともらしい推計値を返してきます。資料にない数字は存在しないものとして扱ってください。
- 「観光客が減った」と一言で言い換えさせること。実人数と延べ人数、県内客と県外客、観光目的とビジネス目的で増減の向きが違う統計なので、要約の段階で前提が落ちます。
任せてよい作業
- 書き写した数字をもとにした社内共有用の3行の要約。自社の市町村と分類の令和6年比を渡し、「宿のスタッフ向け」「取引先向け」など読む相手を指定して書かせます。
- 自社の客層に合わせて並べ替えた説明文。「県外からの日帰り客向け」「台湾からの宿泊客向け」のように、統計で増えている区分を指定して、館内案内や商品説明の下書きを作らせます。
- 前年比の表を文章に直す作業。表4や表6の該当行を渡し、「令和6年比97.2%」を「前年より2.8%少ない」のように読みやすく直すのは得意です。ただし換算結果は必ず人が検算してください。
岩手の現場で効く使い方
台湾からの観光客が321,234人回で構成比57.2%、中国が54.0%増という数字は、多言語案内の優先順位を決める根拠になります。繁体字と簡体字のどちらを先に整えるか、という判断は統計から決め、案内文の下書きは生成AIに任せる、という分担です。観光施設の多言語案内とSNS発信の具体的な手順は「岩手の観光・宿泊業がAIで多言語案内とSNS発信を回す方法」に、周遊とインバウンドの全体像は「岩手観光×AI活用ガイド2026」にまとめています。
よくある質問
Q. 入込客数が減ったのに観光消費額が増えたのは、物価上昇のせいですか。
資料は理由を断定していません。読み取れるのは、日帰り客の観光消費額単価が下がり、宿泊客とビジネス客の単価が上がったこと、ビジネス目的の観光消費額が135.2%、訪日外国人の観光消費額が130.8%に増えたことです。物価の影響を除いた実質の観光消費額は、この資料には載っていません。
Q. 「実人数」と「延べ人数」はどちらを使えばよいですか。
他の都道府県と比べるときや観光庁の公表値と並べるときは実人数(16,160千人・回)を使います。自社の市町村や分類の増減を見るときは、表4から表6に載っている延べ人数を使います。1つの資料の中に両方あるので、引用するときは必ずどちらかを明記してください。
Q. 自分の市町村の数字が載っていないのですが。
延べ人数は33市町村すべてが表4と表5に載っています。ただし観光入込客数が年間1万人以上、または特定月に5千人以上という要件を満たす観光地点と行祭事・イベントだけが集計対象なので、小さな施設の来訪者は含まれていません。実人数や観光消費額は県全体の推計値で、市町村別には載っていません。
Q. 外国人観光客の数字が2種類あるのはなぜですか。
県独自統計の入込客数(561,354人回)は、観光地点などを訪れた回数を数えた延べの数字です。観光庁の宿泊旅行統計調査の外国人延べ宿泊者数(429,950人泊)は、従業者数10人以上の宿泊施設に泊まった人泊数です。対象も単位も違うため、足したり比べたりはできません。
Q. 令和8年(2026年)の資料はいつ出ますか。
令和7年版の公表日が2026年9月15日で、令和6年版の公表日が2025年9月18日でした。県独自統計は3月末(教育旅行客・外国人観光客)と5月末(スキー客)に先に出ます。正確な日程は県の観光統計ページで確認してください。
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参考・出典
- 岩手県商工労働観光部観光・プロモーション室「令和7年岩手県観光統計概要」(2026年9月15日公開)
- 岩手県商工労働観光部観光・プロモーション室「令和7年版 岩手県観光統計概要(PDF)」(令和8年9月)
- 岩手県「「いわての観光統計」教育旅行客・外国人観光客の入込動向(令和7年)」(令和8年3月27日掲載)
- 岩手県「観光統計」(年次一覧ページ)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査(2026年7月・第1次速報、2026年6月・第2次速報)」(2026年8月31日公表)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」(統計情報・白書)