この記事の要点
- 令和9年3月に卒業予定の高校生向けの求人は、令和8年7月末日現在で5,016人。前年同期比で133人(2.6%)の減少です。
- 県内の求人倍率は3.21倍で、前年同期から0.15ポイント上がりました。ただし上がった理由は求人が増えたからではありません。県内就職を希望する求職者が7.1%減った結果です。
- 産業別では製造業1,925人が全体の38.4%、建設業1,007人が20.1%。この2業種で6割近くを占めます。
- 地域別では内陸部4,069人(3.8%減)に対し、沿岸部947人(2.9%増)。沿岸のほうが前年を上回りました。
- 令和9年3月卒の選考は9月16日に始まっています。7月末の5,016人は途中経過で、受理はこのあとも続きます。
令和9年3月卒の高卒求人は5,016人
岩手労働局が令和8年8月28日に公表した「令和9年3月新規高等学校卒業予定者対象求人受理状況」によると、令和8年6月1日から7月31日までに受理した求人は5,016人でした。前年同期比では133人、率にして2.6%の減少です(岩手労働局「令和9年3月新規高等学校卒業予定者対象求人受理状況(令和8年7月末日現在)」)。

「過去10年間で8番目」という位置づけ
同じ資料には、岩手県や市町村と連携した経済団体への求人確保要請や、求人の早期提出を促すポスター作成といった取り組みの結果、7月末日現在の求人数が5,016人となり「過去10年間で8番目となった」と書かれています。
減ってはいるものの、水準が崩れたわけではない、という読み方になります。同じグラフを見ると、7月末日現在の求人数は令和5年3月卒で5,546人、令和7年3月卒で5,497人、令和8年3月卒で5,149人。ここ数年は5,000人台前半から半ばで動いています。
7月末の数字はまだ途中経過
見落としやすいのは、7月末はまだ受理の途中だということです。同じグラフの点線で示された最終求人数を見ると、令和8年3月卒は7月末5,149人に対して最終5,475人でした。夏を過ぎてからも求人は積み上がります。
自社が「まだ求人票を出していない」場合でも、遅れているとは限りません。ただし、学校から企業への応募書類の提出が始まるのは9月5日で、選考開始は9月16日です。今から出す求人は、この一巡を外してからの勝負になります。
求職者は2,101人、うち県内希望は1,565人
求職者数は全体で2,101人。前年同期比31人(1.5%)の減少です。内訳は県内希望が1,565人(前年同期比120人・7.1%減)、県外希望が536人(同447人から19.9%増)でした。
卒業予定者数そのものは9,586人で、前年の9,686人から1.0%減っています。求人の減り方よりも、県内で働きたいという生徒の減り方のほうが大きい、というのがこの資料のいちばん重い事実です。
なお、ここでいう卒業予定者数はハローワークの安定所単位で集計された数字です。学校単位の在籍者数や卒業者数は文部科学省「学校基本調査」の系統で公表されており、調査が別なので数字はそのまま一致しません。並べて使うときは出どころを分けて書きます。
県内求人倍率3.21倍は「求人が多い」だけの数字ではない
県内の求人倍率は3.21倍。前年同期の3.06倍から0.15ポイント上がりました。

倍率の作り方を押さえる
この倍率は、県内求人数を県内就職希望の求職者数で割ったものです。5,016人 ÷ 1,565人 = 3.21倍。分子の求人は2.6%減っているのに倍率が上がったのは、分母の県内希望者が7.1%減ったからです。
倍率が上がった=採用しやすくなった、ではありません。むしろ逆で、取り合う相手の母数が減っています。有効求人倍率でも同じ構造が起きることは岩手の完全失業率2.6%|就業者59万6千人の読み方でも触れたとおりです。
安定所別に見ると倍率の意味が変わる
ハローワーク(安定所)別の県内求人倍率は次のとおりです。
| 安定所 | 求人数(県内) | 求職者(県内希望) | 県内求人倍率 | 前年同期差 |
|---|---|---|---|---|
| 盛岡 | 1,501人 | 569人 | 2.64倍 | ▲0.25 |
| 花巻 | 399人 | 116人 | 3.44倍 | 0.37 |
| 北上 | 664人 | 205人 | 3.24倍 | ▲0.19 |
| 水沢 | 781人 | 186人 | 4.20倍 | 0.96 |
| 一関 | 487人 | 186人 | 2.62倍 | ▲0.30 |
| 二戸 | 237人 | 47人 | 5.04倍 | 1.46 |
| 釜石 | 283人 | 81人 | 3.49倍 | 0.61 |
| 宮古 | 263人 | 106人 | 2.48倍 | 0.22 |
| 大船渡 | 156人 | 34人 | 4.59倍 | 1.77 |
| 久慈 | 245人 | 35人 | 7.00倍 | 2.47 |
| 合計 | 5,016人 | 1,565人 | 3.21倍 | 0.15 |
久慈の7.00倍は、求人が多いからではありません。求人245人に対して県内希望の求職者が35人しかいない、という数字です。久慈の求職者76人のうち41人は県外を希望しています。二戸の5.04倍、大船渡の4.59倍も同じ構造です。
逆に盛岡2.64倍、一関2.62倍、宮古2.48倍は、県内で低いほうです。盛岡は求職者727人と県内最大で、県内希望も569人います。母数が多いぶん、倍率としては落ち着きます。
盛岡は県外希望が75.6%増えている
盛岡の求職者727人の内訳は、県内希望569人・県外希望158人。前年は県外希望が90人でしたから、75.6%の増加です。全体で見ても県外希望は447人から536人に増えました。
盛岡圏の企業は、倍率2.64倍という見かけの数字よりも厳しい競争に置かれていると読むのが妥当です。
産業別|製造業1,925人が全体の38.4%
産業別で求人数が多いのは、製造業1,925人、建設業1,007人、卸売業・小売業567人の順です。構成比は製造業38.4%、建設業20.1%で、この2業種だけで6割近くを占めます。

増えた業種
製造業は前年同期比2.3%増と、全体が減るなかで増やしました。内訳では食料品製造業316人(7.1%増)、輸送用機械器具製造業305人(6.6%増)、電子部品・デバイス・電子回路製造業253人(1.2%増)、金属製品製造業155人(7.6%増)、情報通信機械器具製造業46人(27.8%増)が伸びています。
製造業以外では、運輸業・郵便業132人(13.8%増)、電気・ガス・熱供給・水道業21人(23.5%増)、宿泊業124人(8.8%増)が増えました。
北上を中心とする半導体関連の設備投資は、こうした電子部品・金属加工の求人と地続きです。背景はキオクシア北上のK3(Fab3)とは|2029年度稼働・1.8兆円にまとめています。
減った業種
一方で建設業は1,007人(7.5%減)、医療・福祉365人(8.1%減)、宿泊業・飲食サービス業194人(9.8%減)、生活関連サービス業・娯楽業98人(14.8%減)、複合サービス事業52人(16.1%減)と下げています。
飲食サービス業は70人で30.7%減と、下げ幅がいちばん大きい区分です。同じ「宿泊業、飲食サービス業」のなかでも、宿泊は増え、飲食は減る、と逆を向いています。大分類だけを見て判断すると見誤ります。
職業別では技能工等が2,835人
職業別では技能工等が2,835人(3.1%減)で最大です。うち製造・制作の職業が1,984人(2.6%減)、定置機関・建設機械運転・電気工事が216人(8.5%減)。次いでサービス688人(8.3%減)、管理・専門・技術537人(2.1%増)、事務406人(1.7%減)、販売320人(3.6%減)と続きます。
増えているのは管理・専門・技術だけです。高卒求人の中心は依然として技能職ですが、その技能職の求人が全体を押し下げている構図になっています。
内陸4,069人・沿岸947人|沿岸だけが前年を上回った
地域別の求人数は、内陸部合計4,069人(3.8%減)、沿岸部合計947人(2.9%増)です。求人件数で見ても内陸部1,676件(3.6%減)に対し、沿岸部452件(3.7%増)。前年を上回ったのは沿岸部だけでした(岩手労働局「令和9年3月新規高等学校卒業予定者対象求人受理状況(令和8年7月末日現在)」)。

安定所別の求人の動き
内陸部では二戸237人(6.8%増)と北上の求人件数225件(1.4%増)が増えた一方、一関487人(10.3%減)、花巻399人(4.5%減)、盛岡1,501人(4.2%減)、北上664人(4.0%減)、水沢781人(0.9%減)が減りました(岩手労働局・同資料)。
沿岸部では宮古263人(19.0%増)、久慈245人(10.4%増)が伸び、大船渡156人(16.1%減)、釜石283人(2.7%減)が減っています(岩手労働局・同資料)。
卒業予定者数が増えている安定所もある
卒業予定者数は県全体で9,586人(1.0%減)ですが、安定所別では北上851人(5.2%増)、一関1,060人(4.6%増)、花巻943人(3.6%増)、宮古475人(0.2%増)が前年を上回りました。減ったのは二戸275人(8.3%減)、釜石349人(7.9%減)、久慈332人(7.8%減)、水沢761人(2.8%減)、盛岡4,212人(2.6%減)、大船渡328人(2.1%減)です(岩手労働局・同資料)。
つまり「生徒が減ったから採れない」で片づかない地域があります。北上は卒業予定者が増え、県内希望の求職者も205人と前年202人から増えているのに、求人のほうが4.0%減っている(岩手労働局・同資料)。ここは求人の出し方で取り返せる余地が残っています。
選考開始後のスケジュールと、県・労働局の受け皿
令和9年3月卒の日程
岩手労働局の資料には、令和9年3月卒の採用選考スケジュールとして、学校から企業への生徒の応募書類提出開始が9月5日、企業による選考開始が9月16日と明記されています。この記事を公開している時点では、選考はすでに始まっています。

労働局・ハローワーク側は、選考開始に先立つ企業情報発信や就職ガイダンス、選考開始後は高校と就職支援ナビゲーターの連携による支援、就職面接会の開催に取り組むとしています。毎月の職業紹介状況は岩手労働局「新規学校卒業者の職業紹介状況」で更新されます。高校分は6月分から翌年6月末現在まで公表されるので、内定率の推移はここで追えます。
岩手県側の窓口
岩手県側にも受け皿があります。いわてで働こう推進協議会は、行政・経済団体・教育関係団体が一体となって県内就職を進める枠組みで、平成29年度には「高卒者の県内就職ワーキンググループ」を設置し、高卒者の県内就職率の向上に向けた現状分析と議論を行っています。
このほか、岩手県の就職のページからは、県内の仕事・就職情報サイト「シゴトバクラシバいわて」や「ジョブカフェいわて」につながります。求人票を出して終わりにせず、こうした県内向けの露出面に自社の情報を載せておくことが、県外希望が増えている局面では効いてきます。
この数字を自社の採用判断に落とす4手順
手順1|自社の安定所エリアの倍率を見る
県平均の3.21倍ではなく、自社が求人を出している安定所の倍率を見ます。久慈7.00倍・二戸5.04倍のエリアなら、生徒1人に対して求人が7件並ぶ状態です。盛岡2.64倍・一関2.62倍なら、条件面の比較にさらされます。
手順2|同じ産業中分類の増減を確認する
大分類ではなく中分類で見ます。宿泊業は8.8%増、飲食サービス業は30.7%減というように、同じ大分類のなかで逆を向いていることがあります。自社の属する中分類の求人が増えているなら、それだけ取り合いが激しいということです。
手順3|県外希望の増加分と賃金の下限を織り込む
県外希望は447人から536人へ19.9%増えています。盛岡では90人から158人へ75.6%増。県内で比較されるだけでなく、県外企業と比較されていると考えて、募集条件と説明の仕方を見直します。
賃金の相場観は岩手の職業別求人賃金2026|求人下限204,437円・希望210,396円が使えます。加えて、岩手の最低賃金は1,031円から1,090円へ引き上げる答申が出ており、発効は2026年12月1日の見通しです(厚生労働省「地域別最低賃金の改定状況」)。令和9年3月卒が入社するのは改定後なので、求人票の賃金は改定後の水準を前提に組み立てます。詳しくは岩手の最低賃金1,090円と支援策の使い方にまとめています。
手順4|来年の求人の出し時期を決める
令和8年3月卒は7月末5,149人から最終5,475人まで積み上がりました。遅れて出す求人が一定数あるということです。一方で、選考開始は9月16日。学校訪問や職場見学の受け入れを考えると、6月から7月に出すほど生徒の目に触れる時間が長くなります。今年の結果を見て、来年の提出時期を前倒しするかどうかを決めておきます。
生成AIに高卒採用の作業を任せるときの線引き
求人票の文面づくりや職場見学の案内文は、生成AIに下書きさせると速くなります。ただし、任せてよい範囲と任せてはいけない範囲を分けておく必要があります。具体的な作業手順は岩手の高卒採用×AI活用ガイド2026|求人票・職場見学・9月選考の準備にまとめています。

任せてよいこと
職場見学の案内文、会社紹介資料のやさしい言い換え、仕事内容の説明文の下書き、保護者向けの説明文、面接後のお礼状の型。いずれも、事実は自社が用意し、文章の整え方だけをAIに任せる使い方です。
任せてはいけないこと
求人票に載せる賃金・労働時間・休日といった条件そのものを、AIに「相場から推定」させてはいけません。条件は自社の就業規則と実態から書きます。統計の数字も同じで、AIに思い出させるのではなく、公表資料から自分で転記します。
生徒の氏名・学校名・成績・面接メモなどの個人情報を、外部の生成AIサービスに貼り付けないことも徹底します。
数字を渡すときの指示文
統計を読ませたいときは、数値を自分で貼ったうえで、次のように範囲を切ります。
- 「貼り付けた表の数値だけを使ってください。表にない数字は書かないでください。」
- 「求人数と求職者数を並べて、前年からの増減を一覧にしてください。計算の根拠も書いてください。」
- 「この数字から言えないことがあれば、『この資料からは判断できません』と書いてください。」
- 「当社の求人票の文面を、中学生が読んで分かる言葉に直してください。条件の数字は変えないでください。」
出力は元の資料と突き合わせます。そのうえで求人票に反映するかどうかは人が決めます。
よくある質問
Q. 求人が2.6%減ったのに倍率が上がったのはなぜですか。
A. 倍率は県内求人数を県内就職希望の求職者数で割った値です。求人が2.6%減った一方で、県内希望の求職者が7.1%減ったため、割り算の結果として3.06倍から3.21倍に上がりました。採用しやすくなったという意味ではありません。
Q. 久慈の7.00倍は求人が多いということですか。
A. 求人数は245人で、県内では多いほうではありません。県内就職を希望する求職者が35人しかいないため倍率が高く出ています。久慈の求職者76人のうち41人は県外を希望しています。
Q. 7月末の5,016人が最終的な求人数ですか。
A. いいえ。7月末日現在の途中経過です。同じ資料のグラフでは、令和8年3月卒は7月末5,149人に対して最終求人数5,475人となっています。
Q. 今から求人票を出しても間に合いますか。
A. 受理は続きますが、応募書類の提出開始は9月5日、選考開始は9月16日です。最初の一巡には間に合いません。年内の追加募集や、来年に向けた提出時期の前倒しを検討する場面になります。
Q. 更新はいつ確認すればよいですか。
A. 岩手労働局の「新規学校卒業者の職業紹介状況」のページで、高校分は6月分から翌年6月末現在まで公表されます。選考開始後は内定率がここで追えます。
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