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岩手の秋サケ回帰予報0.94万尾|震災前0.1%の読み方

岩手の秋サケ回帰予報0.94万尾|震災前0.1%の読み方

この記事の要点

  • 岩手県水産技術センターが令和8年7月31日に公表した2026年度の秋サケ回帰予報は、尾数0.94万尾・重量26トンです。予測期間は令和8年9月から令和9年2月、予測海域は岩手県沿岸です。
  • 令和7年度の実績は1.67万尾・42トンでした。今年度はそこから4割程度減る見込みです。震災前の平均値(平成20〜22年度平均)は768万尾・25,053トンで、予報はその0.1%にあたります。
  • 95%予測範囲は0.30〜4.05万尾・8〜118トンです。中心値だけを引用すると幅を落とします。回帰の盛期は10月下旬中心、河川そ上は11月上旬中心で0.74万尾と見込まれています。
  • 漁獲速報は「沿岸漁獲」「河川捕獲」「海産親魚」の3区分です。令和8年度の9月10日現在は沿岸漁獲88尾・196.8kg、河川捕獲59尾で、合計147尾です。
  • 尾数は減っていますが単価は上がっています。令和7年度の最終値は沿岸漁獲7,335尾に対し平均単価2,397円/kgで、対前年比は尾数33.5%、単価145.0%でした。
  • 天然の秋サケが減る一方で、県内の海面養殖サーモンは令和元年度の16トンから令和6年度の2,032トンまで増えました。数字を引用するときは、この2つを分けて書きます。

2026年度の予報は0.94万尾|前年度から4割減

秋サケの回帰予報は、岩手県水産技術センターが毎年夏に公表します。2026年度分は令和8年7月31日付で、予測期間は令和8年9月から令和9年2月、予測海域は岩手県沿岸です(岩手県水産技術センター「2026年度岩手県秋サケ回帰予報」(令和8年7月31日))。

回帰尾数・回帰重量・回帰時期の3つを横に並べた図
2026年度岩手県秋サケ回帰予報の3つの数字

予報の3つの数字

項目 令和8年度予測値 令和7年度実績値 震災前の平均値
回帰尾数 0.94万尾 1.67万尾 768万尾
回帰重量 26トン 42トン 25,053トン

震災前の平均値は、平成20〜22年度の3か年平均です。令和8年度の予測値0.94万尾は、その768万尾に対して0.1%にあたります。令和7年度の1.67万尾と比べても4割程度の減少です。

予測範囲は0.30〜4.05万尾

予報には95%予測範囲が付いています。尾数は0.30〜4.05万尾、重量は8〜118トンです。下限と上限で13倍以上の開きがあり、中心値の0.94万尾だけを資料に書くと、この幅が消えます。金融機関や取引先に向けた数字なら、「0.94万尾(予測範囲0.30〜4.05万尾)」と括弧で添えるのが正確です。

回帰の時期は、目立ったピークがなく10月下旬中心と予測されています。河川そ上は11月上旬を中心に0.74万尾(予測下限値0.27万尾)です。仕入れや加工のシフトを組むときは、この2つの時期が約10日ずれる点が効いてきます。

震災前は768万尾|いまは0.1%

「0.1%」という数字は、率の話というより桁の話です。768万尾が0.94万尾になったということは、800分の1以下になったということです。三陸の水産加工業でサケの原料調達をどう組み替えるかという論点は、三陸水産業×AIの記事でも扱っています。

768万尾から0.94万尾まで下がる3段の階段図
震災前の平均値から令和8年度予測値までの落差

年齢別に見ると4歳魚が中心

予報は2歳魚から6歳魚まで年齢別に積み上げて計算されています。3〜5歳魚の内訳は次のとおりです。

年齢 令和8年度予測値 令和7年度実績値 震災前の平均値
3歳魚 2.3千尾 2.6千尾 363千尾
4歳魚 5.3千尾 12.9千尾 3,944千尾
5歳魚 1.5千尾 1.2千尾 3,136千尾

中心は4歳魚ですが、令和7年度の12.9千尾から5.3千尾へ半分以下になる見込みです。震災前の4歳魚3,944千尾と比べると、桁が3つ違います。5歳魚だけは1.2千尾から1.5千尾へわずかに増える予測ですが、絶対数が小さいため全体を押し上げる力はありません。

予測の前提も一緒に引用する

センターは、過大評価を避けるため平成27年級以降のデータだけを使い、回帰尾数を対数変換して予測したと明記しています。10分の1以下まで減る年級があり、桁が変わるためです。また、河川捕獲の割合が上昇していることから、海面と河川を分けて予測しています。重量は、片岸川・織笠川・津軽石川の3歳魚の平均魚体重と翌年度の平均魚体重の関係式から求めたもので、平成8年度から令和7年度までの30年間のデータが使われています。

この前提を書かずに数字だけを引用すると、「なぜ去年の実績から単純に伸ばした値と違うのか」を説明できなくなります。

9月上旬の実績は沿岸88尾|速報の読み方

予報とは別に、県の水産振興課が漁期中の実績を「秋さけ漁獲速報」として公表しています。令和8年度の最新は9月10日現在のものです(岩手県「秋さけ漁獲速報」(令和8年度・9月上旬))。

合計147尾を沿岸漁獲88尾と河川捕獲59尾に分けた帯図
漁獲速報の合計は沿岸漁獲と河川捕獲に分かれる

3つの区分を混ぜない

区分 令和8年度 9月10日現在の累計 対前年比(尾数)
沿岸漁獲 小計 88尾・196.8kg 141.9%
うち定置 87尾・195.1kg 140.3%
河川捕獲 59尾・135.6kg 19.4%
合計 147尾・332.4kg 40.2%

沿岸漁獲の対前年比は141.9%で増えているのに、合計では40.2%と大きく減っています。理由は河川捕獲が19.4%まで落ちているためです。9月上旬は沿岸の数字が1桁から2桁しかない時期なので、比率が跳ねやすくなります。「今年は前年より4割増えている」と沿岸だけを取り出して書くと、実態と逆の印象になります。

地区別は12の魚市場で分かれる

速報には魚市場ごとの内訳が載っています。9月10日現在の累計尾数は、久慈59尾、八木8尾、宮古6尾、山田5尾、田野畑3尾、釜石2尾、大船渡2尾、普代1尾、船越1尾、大槌1尾です。県北の久慈が全体88尾の大半を占めています。

自社の仕入れ先が特定の市場に偏っているなら、県全体の数字ではなくその市場の行を見ます。平均体重は2.24kg/尾(対前年比102.0%)、沿岸漁獲の平均単価は1,506円/kgです。

尾数は減り、単価は上がっている

金額の動きは尾数と別に追う必要があります。令和7年度の最終値(令和8年2月28日現在)を見ると、その差がはっきりします(岩手県「令和7年度秋さけ漁獲速報(2月下旬)(最終版)」)。

前年度と令和7年度の平均単価を左右に並べ、下に対前年比の尾数を置いた図
令和7年度の平均単価と対前年比

令和7年度の最終値

項目 令和7年度累計 対前年比
沿岸漁獲 尾数 7,335尾 33.5%
沿岸漁獲 重量 18,633.5kg 31.2%
沿岸漁獲 金額 44,667,092円 45.3%
平均単価 2,397円/kg 145.0%
河川捕獲 尾数 9,302尾 47.3%
合計 尾数 16,743尾 38.9%

尾数は3分の1になりましたが、金額は45.3%残りました。差を埋めたのが平均単価です。前年度の1,654円/kgから2,397円/kgへ、145.0%に上がりました。平均体重は2.54kg/尾で、前年度の93.1%とやや小型化しています。

「金額」で見ると印象が変わる

同じ不漁を説明するのに、尾数で言えば「3分の1」、金額で言えば「半分弱」です。どちらも正しい数字ですが、話の向き先で使い分けます。加工原料の調達コストを説明するなら単価の145.0%が効き、漁協の収入を説明するなら金額の45.3%が効きます。補助金の申請書で「売上が減った」と書く場合は、根拠として尾数ではなく金額の行を引くのが筋です。

なお、速報の金額と平均単価は沿岸漁獲から算出されており、消費税を含んだ値です。河川捕獲と海産親魚には金額が付きません。この注記を落とすと、合計尾数16,743尾で44,667,092円を割って単価を出すという誤りが起きます。

県内では海面養殖のサーモンが伸びている

天然の秋サケが減る一方で、県は海面養殖のサーモンを新しい柱に据えています。令和4年3月の「岩手県水産業リボーン宣言」で、サケ・マス類の海面養殖拡大が3本柱の1つとして掲げられました(岩手県農林水産部水産振興課「新たな漁業・養殖業の取組(県産サーモン)について」第64回岩手県水産審議会資料(令和7年2月12日))。

令和元年度から令和6年度まで右上がりに伸びる1本の線の図
県内のサーモン養殖水揚量の推移

水揚量は令和元年度16トンから令和6年度2,032トンへ

年度 県内のサーモン養殖水揚量
令和元年度 16トン
令和2年度 177トン
令和3年度 569トン
令和4年度 1,191トン
令和5年度 1,810トン
令和6年度 2,032トン

令和元年度に海面養殖が始まり、6年で2,032トンまで増えました。資料では令和7年度に3,000トン程度の生産が計画されているとされています。第2期アクションプランの生産量目標は、現状値である令和3年度の569トンに対し、令和5年度1,700トン、令和6年度1,900トン、令和7年度2,100トン、令和8年度2,300トンです。令和5年度・令和6年度はいずれも目標値を上回りました。

天然と養殖を混ぜて書かない

県内で養殖されているのはトラウトサーモン(ニジマス)、ギンザケ、サクラマスで、「岩手・三陸・やまだ オランダ島サーモン」「久慈育ち琥珀サーモン」「釜石はまゆりサクラマス」といったブランド名で流通しています。秋サケ(シロザケ)とは魚種も流通経路も別です。

「岩手のサケは増えている」「岩手のサケは減っている」はどちらも成り立ってしまうため、資料では必ず「秋サケ(天然・定置)」か「サーモン(海面養殖)」かを書き分けます。養殖側の現場運用については岩手のサーモン養殖×AIの記事にまとめています。

県の数字を資料に引用する手順

数字の事故は、時点と区分を落としたときに起きます。手順を決めておけば、誰が作っても同じ資料になります。

資料名・時点・区分から表の整形・想定問答を経て突き合わせまで進む流れ図
引用時に添える3点と生成AIに任せる範囲

引用時に添える3点

  1. 資料名と公表主体(岩手県水産技術センター「2026年度岩手県秋サケ回帰予報」/岩手県農林水産部水産振興課「秋さけ漁獲速報」)
  2. 時点(令和8年7月31日公表/9月10日現在/令和8年2月28日現在の最終値)
  3. 区分(沿岸漁獲か、河川捕獲を含む合計か。天然の秋サケか、海面養殖のサーモンか)

予報値を使う場合は、これに95%予測範囲を足します。漁期中の速報は旬ごとに更新されるため、社外に出す資料には「9月10日現在」のような時点を必ず入れます。県の統計そのものの探し方は岩手県の統計データの探し方の記事で解説しています。

全国や他県と比べるときの出どころ

他県と並べるなら、国の資料に当たります。水産研究・教育機構の「さけます来遊速報」は北海道・青森・岩手・宮城・福島・茨城・秋田・山形・新潟・富山・石川の11道県が対象で、令和8年度の第1報は8月31日現在のものです。道県別来遊数の表は10月中旬頃に掲載が始まる予定とされています(水産研究・教育機構「さけます来遊速報(令和8年度)」)。

年単位の確定値は農林水産省の海面漁業生産統計調査です。令和7年漁業・養殖業生産統計の第1報は令和8年5月29日に公表されています。都道府県別の魚種別漁獲量はe-Statに置かれており、さけ・ます類は表2-3「大海区都道府県振興局別統計 魚種別漁獲量(さけ・ます類細分類)」で細かく分かれます(e-Stat「海面漁業生産統計調査 確報 令和6年漁業・養殖業生産統計」)。市町村別統計は平成30年で廃止されているため、市町村単位の数字を国の統計から取ることはできません。

生成AIに任せる部分と任せない部分

任せてよいのは、数字を確定させたあとの作業です。魚市場別の内訳から自社の取引先の行だけを抜き出した表の整形、取引先向け説明文の下書き、社内会議で出そうな質問への想定問答、補助金の申請書に載せる背景説明の言い換え。どれも渡した数字の書き換えなので、読み返せば検証できます。

任せないのは、数字そのものの取得と区分の判断です。「岩手の秋サケの漁獲量は」と生成AIに聞くと、震災前の水準や他県の値、天然と養殖を混ぜた数字が返ることがあります。沿岸漁獲と河川捕獲の違い、予報値と実績値の違いも、県の資料の文言をそのまま使います。

出来上がったら、渡した数字と出力の数字を1つずつ突き合わせます。表を整形させたときは、行数と合計値が元の表と合うかを見ます。ここを省くと、桁が1つ落ちた表がそのまま社外に出ます。

よくある質問

Q. 2026年度の岩手県の秋サケ回帰予報はいくつですか。

A. 尾数0.94万尾、重量26トンです。95%予測範囲は尾数0.30〜4.05万尾、重量8〜118トンです。予測期間は令和8年9月から令和9年2月、予測海域は岩手県沿岸で、岩手県水産技術センターが令和8年7月31日に公表しました。

Q. 震災前と比べてどのくらい減ったのですか。

A. 震災前の平均値(平成20〜22年度平均)は768万尾・25,053トンでした。令和8年度の予測値0.94万尾は、その0.1%にあたります。令和7年度の実績1.67万尾と比べても4割程度の減少見込みです。

Q. 漁獲速報の「合計」と「沿岸漁獲」はどう違いますか。

A. 沿岸漁獲は定置網などによる海面での漁獲で、合計はそれに河川捕獲と海産親魚を足した値です。令和8年度の9月10日現在は、沿岸漁獲88尾に河川捕獲59尾を足して合計147尾です。金額と平均単価は沿岸漁獲だけから算出されています。

Q. 尾数が減っているのに金額の減り方が小さいのはなぜですか。

A. 平均単価が上がっているためです。令和7年度の最終値では、沿岸漁獲の尾数が対前年比33.5%まで落ちた一方、平均単価は1,654円/kgから2,397円/kgへ145.0%になり、金額は45.3%残りました。

Q. 回帰の時期はいつごろですか。

A. 令和8年度は目立ったピークがなく、沿岸への回帰は10月下旬が中心と予測されています。河川そ上は11月上旬を中心に0.74万尾(予測下限値0.27万尾)の見込みです。

Q. 岩手の養殖サーモンの生産量はどこで確認できますか。

A. 岩手県水産審議会の資料です。第64回(令和7年2月12日)の資料に、令和元年度16トンから令和6年度2,032トンまでの水揚量の推移と、第2期アクションプランの目標値が載っています。天然の秋サケとは別の数字なので、資料では分けて書きます。

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参考・出典