岩手の整骨院・接骨院・鍼灸院がいま最初に手をつけるべきなのは、「施術録の下書きメモ・自費メニューの説明文・予約や問い合わせへの返信文といった“書く仕事”を生成AIに下書きさせ、施術者は施術と患者さんとの対話に時間を回す」という使い方です。診断や施術方針の判断をAIに任せるのではなく、記録・文章・発信という周辺業務を軽くする——これが法令にも現場にも無理のない出発点になります。
この記事の要点
- 受領委任で保険を扱う施術所は、施術録を施術完結の日から5年間保存する義務がある。日々の記録・療養費支給申請書まわりの事務負担は年々重くなっている。
- 生成AIの最初の使いどころは「施術録に書く内容の下書きメモ」「自費メニュー・院内掲示の説明文」「予約変更や問い合わせへの返信文」。施術者の“書く時間”を削れる。
- ただし施術所の広告は柔道整復師法24条・あはき法7条で広告できる事項が限定されており、2025年2月には厚生労働省の「あはき・柔整広告ガイドライン」も発出済み。AIが書いた宣伝文をそのまま使うと規制に触れるおそれがあるため、必ず人が確認する。
- 患者さんの氏名・症状などの個人情報はそのまま入力しない。マスキングか一般化して使う。
対象読者
- 岩手県内で整骨院・接骨院・鍼灸院・マッサージ院を運営する柔道整復師・はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師
- 一人〜数名で運営し、施術の合間に記録・請求事務・SNS更新に追われている院長
- 自費メニューの案内や地域への発信を強化したいが、文章づくりに時間が割けない施術所
読了後にできること
- 生成AIに「施術録に書く内容の下書きメモ」「自費メニュー説明文」「問い合わせ返信文」を下書きさせ、確認して仕上げられる
- 広告規制(柔道整復師法・あはき法・広告ガイドライン)の観点で、AIの出力を使ってよい場面とだめな場面の線引きができる
- 患者情報を守りながらAIを使うための、入力前のマスキング手順を実行できる
なぜ岩手の施術所こそAIで“書く仕事”を軽くすべきか
整骨院・接骨院・鍼灸院の仕事は、施術そのものだけではありません。受領委任で保険を扱う院であれば、施術録は施術が完結した日から5年間の保存が義務付けられており、保険者から求められれば速やかに提示できる状態を保つ必要があります。療養費の審査は年々厳格になっており、記録の質がそのまま院の信頼と経営を左右します。
岩手は車社会で、雪の季節には転倒や雪かきによる腰・肩の不調で来院が増える一方、患者さんの多くは高齢の常連です。院長が一人で施術・受付・記録・請求・発信のすべてを回している院も少なくありません。生成AIが得意なのは、まさに「話した内容やメモを文章に起こす」「定型の案内文を整える」「発信のネタを形にする」といった周辺業務です。施術の判断を渡すのではなく、書く仕事を渡す——この発想が、地方の少人数の施術所にいちばん効きます。
今日から使える5つの活用場面
1. 施術録に書く内容の下書きメモ
施術後の記録は、負傷原因・症状・施術内容・経過を毎回文章にする必要があります。施術中に取った走り書きのメモを渡して、記録用の文章に整えてもらいます。
プロンプト例:
「以下は施術後の走り書きメモです。施術録に転記するための下書きとして、来院時の訴え・所見・行った施術・経過と次回方針の順に、事実ベースで簡潔な文章に整えてください。診断名の断定や大げさな表現は避けてください。
(メモ)右肩の挙上時痛 続き/可動域やや改善/手技+物理療法/次回は間隔を空けて様子見…」
出力はあくまで下書きです。施術者本人が内容の正確性を確認・修正したうえで、正式な施術録に記載します。
2. 自費メニュー・院内掲示の説明文づくり
保険施術だけに頼らず自費メニューを育てたい院は多いはずです。メニューの内容と対象を伝えて、院内掲示やパンフレット用の説明文を複数パターン作らせます。
プロンプト例:
「鍼灸院の院内で掲示する自費の全身調整コースの説明文を作ってください。対象は肩こり・冷え・疲れが気になる40〜70代。効果を断定する表現や『治る』などの医療的な効能表現は使わず、施術の流れと料金・所要時間が分かる落ち着いた文面で。3パターンお願いします。」
後述する広告規制の観点から、外に出す広告物とは扱いを分け、効能の断定を含まないかを必ず人の目で確認します。
3. 予約変更・問い合わせへの返信文
「今日の夕方は空いていますか」「保険は使えますか」といった電話やLINEへの返信は、件数が多いわりに文面はほぼ定型です。よくある質問と院の方針を渡して、返信テンプレートを一式作らせておくと、受付対応が一気に軽くなります。予約管理そのものの効率化は、同じ地域密着業態である美容室・理容室のAI活用ガイドの予約対応の考え方がそのまま参考になります。
4. 制度・保険の調べもの要約
療養費の取扱いや算定の考え方は改定が続きます。公開情報の一般的な仕組みを理解する段階でAIに要点を整理させると、学習が速くなります。ただし個別の算定可否や最新の料金は、必ず厚生労働省や保険者の正式資料・所属団体の通知で裏取りします。AIの回答を根拠に請求判断をしてはいけません。
5. 地域向けのセルフケア情報発信
「雪かき前の腰のストレッチ」「デスクワークの肩こり対策」など、季節のセルフケア情報はネタ出しと下書きをAIに任せられます。営業色を抑えた読み物として書かせ、施術者が内容を確認して仕上げれば、地域での認知を無理なく保てます。
広告規制の線引き(最重要)
施術所の広告は、医療機関以上に「書いてよいこと」が法律で限定されています。生成AIを発信に使うなら、ここを外してはいけません。
- 広告できる事項は法律で限定されている。 柔道整復師法24条・あはき法7条により、施術所が広告できるのは氏名・住所・施術所名・電話番号・施術日時など限られた事項だけです。症状への効果・効能や施術方法は広告できません。
- 2025年2月に国のガイドラインが出ている。 厚生労働省は2025年2月18日付で「あはき・柔整広告ガイドライン」を発出しました。軸は従来の法規制と同じですが、判断基準が具体化されています。外向けの広告物を作る前に一度目を通しておくべき資料です。
- AIは規制を知らない前提で使う。 生成AIは「腰痛が改善します」「〇〇に効く」といった、広告では使えない表現を平気で書いてきます。チラシ・看板・ポータルサイトなど広告に当たる媒体に使う文章は、必ず施術者が規制に照らして削り、迷ったら保健所や所属団体に確認します。
- 院内掲示や施術中の説明とは扱いを分ける。 同じ文章でも、使う場所によって規制のかかり方が変わります。AIに書かせる段階から「広告用」か「院内・対面説明用」かを分けて指示するのが安全です。
こうした「AIに任せてよい範囲」を院内ルールとして先に決めておく手順は、AI研修前に決める利用ルール完全ガイドで詳しく解説しています。
患者情報を守る「入力前マスキング」の手順
- メモから氏名・住所・電話番号・生年月日を削除、または「A様」「70代・市内」などに置き換える。
- 症状・既往歴は、下書きに必要な範囲だけを一般化して残す。特定の個人が推測できる珍しい事情は省く。
- マスキング後のテキストだけをAIに渡し、下書きを受け取る。
- 出力を施術録や院の書類に戻すときに、伏せた実名を人の手で補う。
記録・申し送りを扱う際の考え方は、医療・介護事業所向けAI活用ガイドと共通です。あわせて参考にしてください。
よくある失敗パターン
- AIの下書きをそのまま施術録にしてしまう。 事実と異なる記載や大げさな表現が残ると、療養費の審査や指導監査で不利になる。必ず施術者本人が確認する。
- 効能をうたう文章を広告に使ってしまう。 AIは広告規制を考慮しない。外向けの文章は規制に照らして人が削る。
- 患者さんの実名や詳しい症状を入力する。 情報漏えいリスク。マスキングを習慣にする。
- 算定や請求の判断をAIに聞いて済ませる。 制度は改定される。正式資料と所属団体への確認を省かない。
- いきなり全部に広げる。 まずは施術録の下書きメモ1つから始め、確認の流れが回ることを見てから発信や返信文に広げる。
受付・経理までまとめて軽くする
施術録まわりが回り始めたら、日計表の整理、経費メモ、スタッフ向けの手順書づくりなど、受付・経理の書き仕事にも同じ型を広げられます。進め方は岩手の中小企業がAIで経理・総務・社内文書を軽くする方法にまとめています。
まとめ:施術の判断ではなく“書く仕事”をAIに渡す
整骨院・接骨院・鍼灸院にとって生成AIは、施術や判断を代わりにやらせる道具ではありません。施術録の下書きメモ・自費メニューの説明文・返信文・セルフケア発信といった書く仕事を任せ、施術者が施術と患者さんに集中するための道具です。広告規制の線引きを守り、患者情報をマスキングし、人が最終確認する——この3点を守れば、一人院長の施術所でも今日から安全に始められます。
岩手の施術所のAI活用相談はUravationへ
Uravationは、AI研修と業務設計を通じて、地方の中小事業者が「安全に・現場が回る形で」生成AIを導入する伴走支援を行っています。施術所のように記録義務と広告規制が重い業種でも、利用ルールづくりから業務への落とし込みまで一緒に設計します。まずはお気軽にご相談ください。