この記事の要点
- 普代村の基幹産業である漁業・水産養殖業(秋鮭の定置網、ワカメ・コンブの養殖、ウニ・アワビ)と、昆布などの特産品づくりの現場でAIが使える場面を整理する
- すき昆布や生ウニ・いくらといった普代固有の産品を、そのままAIに入力してEC商品説明・ふるさと納税PR・SNS投稿の下書きを作る手順を示す
- 東日本大震災で集落を守った普代水門(高さ15.5メートル)と太田名部防潮堤を抱える村として、防災・避難案内文書づくりにAIをどう生かすかを解説する
- AIに入力してはいけない情報と、生食可否・消費期限・栄養表示など食品表示の最終確認を人が行う重要性を明記する
- 中小企業向けのデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の活用ポイントも案内する
この記事の対象読者
普代村内でコンブ・ワカメを養殖する漁業者、ウニ・アワビ・秋鮭を扱う事業者、水産加工・特産品製造の事業者、直売所・商店街・宿泊などの観光事業者、ECやふるさと納税で海の幸を販売する事業者、普代村漁業協同組合の関係者、普代村役場の産業振興・防災担当者。パソコンやスマートフォンの基本操作ができれば、AIの事前知識は不要です。
この記事を読み終えてできること
- 今日からスマートフォンだけで「普代産すき昆布・生ウニの商品説明文」をAIに下書きさせられる
- 養殖作業日誌や水揚げ記録の入力時間を短縮する具体的なプロンプト(入力文)を使える
- 黒崎展望台やみちのく潮風トレイルなど観光案内の多言語下訳をAIで作り、人が確認して掲示できる
- 旬の出荷案内やイベント告知のSNS投稿文を5分以内に作れる
- 避難案内・防災のお知らせ文をAIで整え、人が地域の事情に合わせて仕上げられる
- 食品表示やアレルギーなど「AIに任せてはいけない範囲」を理解して安全に運用できる
普代村の産業とAI活用の接点
普代村(ふだいむら)は、岩手県北部の太平洋沿岸、下閉伊郡の最北端に位置する村だ。面積は約69.66平方キロメートル、推計人口は約2,100人(2026年5月時点)の小さな村で、村の産業は第一次産業である漁業・水産養殖業が大部分を占めている。海の青さにちなんで「青の国」を掲げ、観光産業の発展にも力を入れている。村の現場には、記録・発信・案内など「文章を書く仕事」が日々発生しており、ここがAIの使いどころになる。
コンブ・ワカメの養殖:普代の海ではコンブとワカメの養殖が盛んで、すき昆布や塩蔵ワカメ、こんぶ饂飩(うどん)などの加工品が特産品になっている。村の公式キャラクター「昆布ブラザーズ」が名産の昆布をPRするなど、昆布は普代を象徴する産品だ。養殖は天候・水温・潮の状態に左右され、作業記録や出荷管理が日々発生する分野で、記録整理や発信にAIが役立ちやすい。
秋鮭の定置網漁・沿岸漁業:秋には鮭の定置網漁が行われ、鮭やいくらが水揚げされる。漁港にはヒラメ・イワシ・イナダなどさまざまな魚介が揚がり、漁獲記録・操業日誌・出荷案内など文章化する場面が多い。普代村漁業協同組合が産地としての出荷を支えている。
ウニ・アワビと特産品:5月から7月にかけては新鮮な生ウニが出回り、保存料を使わない天然のウニとして人気がある。アワビも三陸を代表する磯の幸だ。これらの旬の産品は、ECやふるさと納税で全国に販売するには、商品説明文・PRコメント・問い合わせ対応の文章が継続的に必要になる。AIは下書き作成の即戦力になりやすい。
観光・地域発信:普代を代表する景勝地・黒崎には展望台があり、普代浜から野田村・久慈市方面の海岸線と太平洋を一望できる。北山崎へ続く遊歩道は、環境省の「みちのく潮風トレイル」の一部だ。観光の入口となる施設「青の国ふだい」も整備されており、来訪者向けの案内や多言語発信はまだ伸びしろが大きく、AIによる下訳が活きる領域だ。
防災のまちとしての顔:普代村は防災の面でも全国に知られる。2011年の東日本大震災では、高さ15.5メートルの普代水門と太田名部防潮堤が決壊せずに津波を大幅に減衰させ、集落への浸水被害を最小限に抑えた。沿岸の漁業施設は大きな被害を受けたが、人々の暮らす集落を守った事実は村の誇りであり、防災・避難に関する文書づくりにもAIが役立つ。

水揚げ・養殖作業の記録をAIで整える手順
コンブ・ワカメの養殖や秋鮭の定置網漁では、その日の作業内容・水温・潮の状態・水揚量などを記録する。手書きや箇条書きのメモをそのままAIに渡せば、整った作業日誌の文章に変換できる。記録の負担を減らせば、見返したときの管理にも役立つ。
- 作業後の気づきを、スマートフォンのメモアプリに箇条書きで入力する(「沖の養殖いかだ コンブの間引き 水温やや低め 本日水揚げ 大体○○束 天気晴れ 波静か」など)
- その箇条書きを、ChatGPTやClaudeの入力欄にそのまま貼り付ける
- 「以下の箇条書きを養殖作業日誌の形式で整理してください。数値は変えないでください。日付は○○年○月○日。」とプロンプトを追加する
- AIが整形した文章を確認し、数値・地名・品種名(コンブ・ワカメ・鮭等)が正確かを目で確かめる
- 音声メモを使う場合は、iPhoneの「メモ」アプリのマイクボタンなどで文字起こししてから貼り付ける
- 問題なければWordやGoogleドキュメントにコピーして保存する
プロンプト例①(養殖作業日誌の整理)
以下の箇条書きをもとに、養殖作業日誌の形式で日本語の短い段落を作ってください。数値や品種名は変えないでください。日付は2026年6月2日。
・沖の養殖いかだ コンブの間引き作業
・ワカメ 採取後の状態確認 異常なし
・水温:やや低め 波高:静か 天候:晴れ
・気づき:今年はコンブの伸びが順調
すき昆布・生ウニのEC商品説明をAIで作る手順
普代のコンブやウニは、保存料を使わない天然の味わいや「青の国」と呼ばれる海の物語性がある。この特徴を毎回ゼロから文章にするのは手間だ。商品の特徴をAIに入力すれば、ECサイト用の商品説明文、ふるさと納税の返礼品PRコメント、SNS投稿文を一気に下書きできる。
- 商品の特徴・産地・食べ方・旬の時期を箇条書きでまとめる(公式情報や自分で確認した事実のみを使う)
- ターゲット(誰向けか)と用途(ギフト、自家用、ふるさと納税など)を指定する
- AIに「以下の情報をもとにECサイト用商品説明文(300字)を作ってください。誇張表現は使わないでください」と依頼する
- 生成された文章を読み、産地・鮮度・栄養・生食可否などに不正確な表現や根拠のない断定がないか確認する
- 食品表示やアレルギーに関わる記載は、必ず担当者が公式情報と照合して最終確認する
- 自社の言葉に修正してから公開する
プロンプト例②(すき昆布のEC商品説明文)
以下の情報をもとに、ECサイト向けの商品説明文を300字以内で作ってください。誇張表現は使わず、事実に基づいた表現で書いてください。生食可否や消費期限などの食品表示は書かないでください(別途確認するため)。
商品名:岩手県普代村産 すき昆布
特徴:
・三陸の海で育ったコンブを使った加工品
・普代村を象徴する特産品
・煮物や炒め物など普段の料理に使いやすい
旬・製造:地元で水揚げ・加工
プロンプト例③(ふるさと納税の生ウニ紹介)
岩手県普代村のふるさと納税返礼品として「普代産 生うに」を紹介するPRコメントを150字で作ってください。読者は全国のふるさと納税利用者です。保存料を使わない天然のウニで、旬は5月〜7月という地域の個性が伝わる表現にしてください。根拠のない数字や断定は使わないでください。
黒崎・潮風トレイルの多言語案内をAIで下訳する手順
黒崎展望台やみちのく潮風トレイル、直売所「青の国ふだい」のような来訪者を迎える場では、見どころ・料金・営業時間・注意事項などを案内する場面が多い。国内外からの来訪者に向けて、英語などの案内をAIで下訳すれば準備の負担を減らせる。ただし掲示する前に必ず人が確認することが前提だ。
- 案内に載せたい情報(見どころ、所要時間、料金、営業時間、注意事項)を日本語で正確にまとめる
- AIに「以下の案内文を英語に翻訳してください。観光客向けにわかりやすく丁寧な表現で」と依頼する
- 翻訳結果を、英語がわかるスタッフや翻訳ツール(DeepLなど)でもダブルチェックする
- 地名(黒崎・北山崎など)や安全に関わる注意書きは、原文・訳文の両方を担当者が最終確認する
- 問題なければ掲示物・パンフレット・施設のWebページに反映する
プロンプト例④(黒崎展望台の多言語案内)
以下の日本語の案内文を、観光客向けに英語へ翻訳してください。丁寧でわかりやすい表現にしてください。安全に関する注意は原文のまま正確に訳してください。
・黒崎展望台へようこそ
・断崖の上から太平洋と海岸線を一望できます
・遊歩道はみちのく潮風トレイルの一部です
・足元が滑りやすい場所があります。歩きやすい靴でお越しください
・強風時は十分にご注意ください
旬の出荷案内・イベント告知をSNSで発信する手順
ウニは初夏、コンブやワカメは春、鮭は秋と、普代の海の幸には季節のリズムがある。「今が旬」という情報をこまめに発信したいが時間がない、という声は多い。AIを使えば短い投稿文を素早く下書きできる。
- その日の出荷状況やイベント情報(品目、旬、状態、販売方法、日時)を箇条書きでまとめる
- 媒体(Instagram・X・Facebook)とターゲット(地元の人、県外の食好きなど)を決める
- AIに「以下の情報をもとに、〔媒体名〕向けの投稿文(140字以内)を作ってください。読み手は〔ターゲット〕です」と依頼する
- 生成された投稿文に、誤った日程・価格・在庫情報が含まれていないか確認する
- 個人情報や経営上の機密が含まれていないかをチェックして投稿する
プロンプト例⑤(旬の出荷案内SNS投稿)
以下の情報をもとに、X(旧Twitter)向けの投稿文を140字以内で作ってください。地元の生産者の目線で、親しみやすい表現にしてください。
・普代の生ウニが旬を迎えています(5月〜7月)
・保存料を使わない天然のウニです
・直売所で販売中、ふるさと納税でも受付
・場所:岩手県普代村
プロンプト例⑥(問い合わせ返信テンプレートの整備)
通販で繰り返し来る問い合わせに使う返信テンプレートを作ってください。丁寧なビジネスメール口調で、日本語で。
・配送までの目安日数についての質問
・冷凍保存の可否についての質問
※具体的な保存期限や生食可否は空欄にしておいてください(こちらで確認して埋めます)
避難案内・防災のお知らせをAIで整える手順
普代水門と太田名部防潮堤を抱える普代村にとって、防災は身近なテーマだ。避難経路の案内、防災訓練の告知、住民向けのお知らせ文などは、わかりやすく正確であることが何より大切になる。AIは下書きの作成を助けるが、地域の実情・避難場所・最新の数値は必ず人が確認して仕上げる。
- 伝えたい内容(対象、日時、場所、行動の手順)を日本語で正確に箇条書きにまとめる
- AIに「以下の内容を、住民向けのお知らせ文(やさしい日本語で)にまとめてください」と依頼する
- 避難場所の名称・連絡先・日時などの固有情報は、村の公式情報と1つずつ照合する
- 高齢者や外国人にも伝わるよう、必要なら多言語・ふりがなの版もAIで下訳し、人が確認する
- 区長・消防団・役場の担当で内容を確認してから配布・掲示する
プロンプト例⑦(防災のお知らせ文)
以下の内容を、住民向けのお知らせ文に、やさしい日本語でまとめてください。日時・場所・名称は変えないでください。
・地区の防災訓練を行います
・日時:○月○日(○)午前○時から
・集合場所:○○集会所
・内容:避難経路の確認と消火訓練
・持ち物:飲み物、歩きやすい靴
よくある失敗パターン
AIは便利だが、使い方を間違えるとリスクもある。普代村の水産・加工・観光・防災の現場でよくある失敗パターンと対処法を整理する。
失敗パターン① 個人情報・取引先情報の入力
❌NG:「○○水産さんからの注文。担当者名は△△、口座は□□、住所は××」とそのまま貼り付ける
⭕OK:「取引先からの納期変更の依頼に対する返信文を作ってください(具体的な社名・担当者名・口座は含めない)」と内容だけ伝える
無料プランのAIサービスでは、入力したデータがサービス改善に使われる場合がある。氏名・住所・取引先名・注文番号・口座情報などの個人情報・取引先情報は絶対に入力しない。
失敗パターン② AIが出した産地・鮮度・栄養や生食可否の表示をそのまま使う
❌NG:AIが書いた「とれたて新鮮、生でそのまま食べられます」「栄養豊富で○○に効く」という表現を無確認で商品ページに掲載する
⭕OK:生食可否・消費期限・保存方法・アレルギー・栄養や効能に関わる表現は、必ず担当者が公式情報・食品表示基準と照合してから掲載する
ウニ・アワビ・鮭・昆布などの食品は、産地・鮮度・栄養や生食可否について法令上のルールがある。AIの生成文をそのまま使うと、誤表示や景品表示法違反のリスクがある。食品表示にかかわる部分は人が責任を持って確認する。
失敗パターン③ 水揚量や出荷時期の数値を裏取りせずに使用する
❌NG:AIが「例年○トン水揚げ」と書いた数字をそのまま広報やSNSに使う
⭕OK:水揚量・出荷時期・価格などの数値は、自分の記録や村・漁協の公式情報で裏取りしてから使う
AIは、もっともらしいが事実でない数字を出すことがある。普代村や漁協の発表していない数値を勝手に断定しない。
失敗パターン④ 避難案内・防災情報の最終確認を人が行わない
❌NG:AIが整えた避難案内文を、避難場所や連絡先を確認せずにそのまま掲示する
⭕OK:避難場所の名称・経路・連絡先などは、村の公式情報と1つずつ照合し、担当者が責任を持って最終確認する
防災・避難に関わる情報は、人命に直結する。AIは下書き作成の補助にとどめ、固有情報の正確さは必ず人が担保する。
中小企業が使えるAI導入補助金(2026年版)
AIツールの導入や、それに伴う業務システムの整備には、国の補助金を活用できる場合がある。普代村の水産・加工・観光事業者も対象になり得る。代表的なものに、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)がある。対象になるツール・経費・申請要件は年度や公募回ごとに変わるため、最新の公募要領を必ず確認し、不明点は商工会や専門家に相談するのが安全だ。補助金の考え方や研修との組み合わせ方は、関連記事も参考にしてほしい。
まとめ:普代の現場からAIを使い始めるための3ステップ
- まずは「記録」から始める。コンブ・ワカメの養殖日誌や秋鮭の漁獲メモを、箇条書きでAIに整えてもらうところから試す
- 次に「発信」を任せる。すき昆布・生ウニのEC商品説明や、旬の出荷案内SNS投稿をAIに下書きさせ、人が事実を確認して公開する
- 最後に「案内・防災」へ広げる。黒崎・潮風トレイルの多言語案内や、避難・防災のお知らせ文をAIで整え、固有情報は必ず人が確認して仕上げる
どのステップでも、食品表示・個人情報・防災の固有情報という「人が責任を持つ部分」を外さなければ、AIは普代の小さな事業者にとって心強い助けになる。
Uravationへの相談
「自分の仕事のどこからAIを使えばいいか分からない」「現場のスタッフにも使ってもらえる形で導入したい」という場合は、研修や伴走支援を活用するのも一つの手だ。株式会社Uravationは、岩手の中小事業者・自治体に向けたAI研修・AI活用支援を行っている。普代村のような一次産業・観光が中心の地域でも、現場の業務に即した使い方を一緒に設計できる。まずは無理のない範囲で、今日できる一手から始めてみてほしい。
参考・出典
- 普代村 公式サイト
- 普代村「村の概要」(産業・人口・面積)
- 普代村 – Wikipedia(普代水門・太田名部防潮堤・漁港・人口)
- 黒崎展望台|いわての旅(岩手県観光ポータル)
- 普代村|岩手県移住定住ポータルサイト
- 青の国ふだい(普代村観光・物産情報)
岩手でAI導入・AI研修を進めたい方へ
近隣の市町村や同じ水産・一次産業の現場でのAI活用については、以下の記事も参考になる。